デザインの道に進もうと思ったきっかけを教えてください。
一回目の就活のタイミングが転機でした。実は高校卒業後、デザインとは関係ない理系の大学に進学したんです。大学3年時に周りと同じように就職活動をスタート。就活を進めるなかで興味を持ったのは、学んでいた食品系の知識が活かせる商品企画やパッケージデザインでした。ただ理系・大卒からの就職の場合、営業職を経験してから商品開発やデザインなどの部門や職種に行くというのが王道です。それは道のりが長いと感じてしまいました。私の性格上、単純に自分が費やしている時間は全部やりたいことの方がいいと思うタイプ。それならば、まずはデザイン業界に飛び込むことに直結する知識をつけた方がいい。大学4年時にそう決意し、卒論と並行してデザインの勉強を進め、大学卒業後にデザイン系の専門学校に進学しました。専攻はビジュアルデザイン。広告、販促、印刷物、Webなどのデザインを授業で取り組みました。
どのような就職活動をしていましたか。
専門学校2年時の春過ぎから2~3カ月ほど就活をしました。大学での就活軸と同じ食品関連のデザインを希望していました。
まずはいろいろな企業の説明会に参加してみることが多かったです。実際に働いている人の声を聞くことで、採用サイトなどのテキストベースではわからない肌感を確認していました。会社や働く人たちの雰囲気についてですね。実際に会わないとわからない部分が多くあることを実感しました。とくに社内の年齢層、人の良さ、適度なフランクさといった部分を確認していました。
またデザイナーの就活ではポートフォリオが必須。私の場合は授業の課題で出された仮想クライアントに対するデザイン案を、複数まとめて30ページほどにしました。意識していたのは、一つひとつの作品の完成度です。授業を乗り切るためではなく、就職活動に活かすにはどうするかというゴールを見据えて、取り組んでいました。
現在までの仕事内容について教えてください。
入社当時は化粧品のポスター、販促物、Webサイトなどを作成していました。最近はクライアントの幅が広がり、住宅、電鉄といった仕事も担当しています。
仕事の流れについて説明します。まずはクライアントからチーム全員でオリエンテーションを受け、各々メンバーが解釈を膨らませます。そして、アイデア出しの場を設けて意見を出しあいます。自分一人の頭の中では思いつかないことも、皆でのアイデア出しの場で意見を組み合わせることで生まれたりしますね。自分以外の考えを吸収できる面白さがあります。チーム内での役職・年齢の違いはありますが、意見を出し合う部分はフラットにやっています。
一番印象に残っている仕事はなんですか。
競合プレゼンで自分の案が採用された住宅関連企業の仕事です。メインビジュアルをはじめとして、Webサイトやパンフレット一式なども制作しています。
今回の仕事では、自身の心境の変化が結果につながったと思っています。競合プレゼンでは、勝たないと仕事がまわってきません。そのため、今まではプレゼン傾向を踏まえた対策に固執していることが多かったんです。でも、今回は現地調査を行ったことで原点に立ち返れました。プレゼン前に実際に現地に行って、住んでいる人、街を目の当たりにする機会を設けたんです。どうやったら住宅の良さが伝わるかを実感しました。そうしたら、自分のなかで自然とコンセプトとビジュアルに落とし込むことができて、広告を見る人の視点に立ち返った制作につなげられたんです。実際にあるものを広告するからこそ、自分で体感するのが大切だったなと気づくことができた仕事です。
どんな後輩に入ってきてほしいですか。
カジュアルに意見を出せる方、そして挑戦を前向きに捉えられる方が良いと思います。当社の年齢層は幅広いですが、皆で何でも話せる環境だと感じています。デザインアイデアに年齢・役職は関係ないです。自分の意見が反映される可能性も大いにあります。いろいろな角度から意見を出し合える環境は、誰にとっても良いことです。だからこそ、カジュアルに意見を出していける方が良いと思います。
また、クライアントワークのため、化粧品、製薬メーカー、旅行系など、さまざまな業種と付き合いがあるため、はじめはわからないことも多いです。そのなかで、楽しんで前向きに知識を吸収する気持ちを持てるのは強みですね。
最後に学生へメッセージをお願いします。
デザイナーを目指されている方のなかには「学生時代の作品をまとめたポートフォリオが果たして社会人に通用するのか」という不安を持っている人もいるはず。私が就活で感じたのは、学生時代のアウトプットのクオリティがすべてではないということ。面接官はクオリティよりも学生の思考や制作への姿勢を見ているのだと思います。だからこそ、臆せずに自分のすべてをさらけ出すことをおすすめします。クオリティは気にしすぎずに、自分のこだわり・好きなことを押し出して相手に伝えましょう!