キャラと、ひと/CHOCOLATE 後藤花菜さん〈Fresh Eye〉

キャラと、ひと/CHOCOLATE 後藤花菜さん〈Fresh Eye〉

広告業界や広告・コミュニケーションについて、業界で働く若手の皆さんはどのように感じているのか? 会社に入って感じたこと、日々の仕事で思うこと、これからの想いなど。実際に現場で働いている先輩方の新鮮な視点をお届けする「Fresh Eye」。

今回はCHOCOLATE 後藤花菜さんの視点をご紹介。人間らしさを出しづらい現代社会の中で、後藤さんが目指す「完璧じゃないものづくり」とは。(以下、JAAA REPORTS「Fresh Eye」より転載)

写真:後藤花菜さん
後藤花菜さんCHOCOLATE Inc. Creative Div. Planning Unit
【 目次 】
キャラと、ひと。
JAAA REPORTS「Fresh Eye」

キャラと、ひと。

キャラクターを広告する仕事、キャラクターで広告する仕事。

そのどちらにも、たくさん携わらせてもらうようになりました。

日々たくさんのキャラクターと向き合ううえで辿り着くのは、

私はやっぱり、完璧じゃないものづくりがしたい、という気持ちです。


「人間らしい」ということばを、私たちはよく使います。

つぶらで正直で、どうにも不器用。

おおよそ完璧じゃないその姿を、それでもたぶん、私たちは愛おしさの対象として見つめています。

あらゆることが効率よく出来てしまう世界で、速さと正しさにまみれた世界で、 私たちは日々自分らしさどころか、自分の「人間らしさ」さえ、なるべく見せないように生きている。

正直さや不器用さが許されづらい毎日だから、そうじゃないものを、本能的に求めているのかなあと思います。


キャラクターのお仕事をしている中でも、同じようなことに気付きます。

もはや人間が背負いきれなくなってしまった、人間らしさ。

私たちはいま、それをキャラクターに求めているんじゃないか。そんな、ちょっとさみしい仮説です。


無邪気でくだらなくて無駄だらけ。変わりもので怠けもので、失敗ばかり。

そんなキャラクターが愛されるのはもちろん、そのほうが愛おしいから。

正直で不器用な姿には「かわいそうでかわいい」「がんばれ」という声が集まり、 完璧じゃない姿には「実は私も同じ、だけどこれでいいんだよね」という気持ちが募る。

人間どうしではなかなか許し合えなくて、励まし合えなくて、

だからこそ、人間らしいキャラクターが愛されるのかもしれません。


でも、もし本当にそうだとしたら。

人間らしさが求められているのは、きっとキャラクターだけじゃない。

広告だって同じです。同じだといいなと、私は思っています。


分かりやすくて速い、洗練された広告もクールだけれど、 何だかちょっと覚束なくて、その代わり、とびきり愛着の湧く広告も許されたい。

ずっと心にとっておきたくなるような忘れられないものが、やっぱり、広告でも作れるといい。

そう願うとき、私は、この仕事を目指した頃の気持ちにかえることができます。


「完璧じゃないということが、ちゃんと完璧なもの」が、私は好きです。

数では計れない人間らしさがじっくり積み上がって出来あがるそういう作品だけが、 暮らしていくうえでの、本当に必要な勇気をくれるからです。


キャラもひとも広告も、真ん中にあるものは、きっとみんな同じ。

すべてのいきものが持つ機微への愛着を忘れずに、完璧じゃない、人間らしいものづくりをしていきたいです。


JAAA REPORTS「Fresh Eye」

広告会社が集まり、広告を考え、広告を育てるために生まれたJAAA(日本広告業協会)。1950年の発足以来、日本の広告業界を代表する組織です。同協会が、協会の活動や研究内容を共有する機関誌『JAAA REPORTS』では、若手の業界人が日々感じていることを綴るコラム「Fresh Eye」を連載中です。


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