ストラテジックプランナーは本当に必要か?/ビーコンコミュニケーションズ 神颯真さん〈Fresh Eye〉

ストラテジックプランナーは本当に必要か?/ビーコンコミュニケーションズ 神颯真さん〈Fresh Eye〉

広告業界や広告・コミュニケーションについて、広告会社で働く若手の皆さんはどのように感じているのか? 広告会社に入って感じたこと、日々の仕事で思うこと、これからの想いなど。実際に現場で働いている先輩方の新鮮な視点をお届けする「Fresh Eye」。

今回はビーコンコミュニケーションズ 神颯真さんの視点をご紹介。ストラテジックプランナー(ストプラ)をはじめ、さまざまな職種を経験されてきた神さんが、求められるストプラの役割は何かを問うたコラムです。(以下、JAAA REPORTS「Fresh Eye」より転載)

写真:神颯真さん
神颯真さんビーコンコミュニケーションズ株式会社 Brand Strategy
【 目次 】
ストラテジックプランナーは本当に必要か?
JAAA REPORTS「Fresh Eye」

ストラテジックプランナーは本当に必要か?

「優秀なクリエイティブと優秀な営業がいれば、ストラテジックプランナーは必要ない」

これは、営業のメンバーに言われた言葉です。


僕自身も(ストプラでありながら)、「本当にストプラって必要?」と思うことがあったので、この機会に考えてみたいと思います。結論を先に言うと、「中途半端なストプラは必要なくなりつつある」と思っています。


僕は、現在社会人10年目(若手か微妙なところですね)。広告会社3社で、営業→ストプラ→コミュニケーションプランナー(クリエイティブ職)→ストプラと、職種を変わってきました。


この疑問に直面したのは、初めてストプラになったとき。「戦略家」ではなく「前段屋さん」として扱われることが多かったからです。


「クリエイティブはこうするから、企画に合ういい感じの調査資料いれて補強してよ」

プロジェクト進行で、あるあるな会話(かもしれません)。戦略ではなく、「後付けの証左」を求められているのです。この作業は、そろそろChatGPTによって代替できそうな気もします。


また、営業の指摘のとおり。クライアントブリーフが明確で、営業が選択と集中を行えば、ストプラが不在でも、クリエイティブが良い企画を提案できるケースもあると思います。


では、どんなストプラなら、より優れたコミュニケーションができるのか?


僕は、「“戦略の先”を考えられるストプラ」が必要だと思います。つまり、戦略だけでなく、企画とクリエイティブまで考えてみちゃおう、ということです。


優れた戦略には、「WOW(=驚きや意外性)」があります。カンヌで表彰される企画は、クリエイティブだけでなく、戦略や課題の捉え方が秀逸ですよね。(社会課題に対して、そんな目の付け所あったんだ、と驚いたり。身近だけど気づいていないお困りごとに、頷いたり。)


つまり、優れた戦略と優れた企画は、紙一重なのではないか、と思います。


いわゆる従来のストプラの仕事。

課題を明確にする。

客観的なデータを基にターゲットを定める。

ターゲットのインサイトを見つける。

メディアを定める。


だけではなく、


どんな企画なら、この課題をうまく解決できるのか?

どんなCMであればターゲットのインサイトに響くのか?

どんなビジュアルであれば、そのメディアで活きるのか?


など、この戦略なら、特定のターゲットに尖らせたクリエイティブに。このクリエイティブなら、こんな戦略もありえそう。そんな風に戦略と企画・クリエイティブを行き来しながら考えることが、まわり回って優れた戦略を作ることにも結びつくのではないか、と思います。


そんなやり方がワークした(気がする)一例を挙げます。


戦略をふまえた、企画のコアアイデア・TVCM企画は既にある。けれど、そのアイデアをエンドユーザーにどう拡げていくべきか?がチームの課題でした。


クリエイティブチームと一緒に、「TikTokやXでは、どのターゲットに向けてどんな表現をするのか?」「何をメッセージにするのか?」「そもそも彼らの課題はなにか?」など、クリエイティブ表現・企画と戦略・インサイトを行き来しながらアイデアを出し合い、ディスカッションすることで、明確な戦略を持ちながら尖ったクリエイティブを作ることができたと思います。


「グローバルでは、『クリエイティブ』・『ストプラ』・『営業』が健全な三角関係である事が重要。ストプラの立ち位置は、消費者の視点・ブランドの視点から、その企画がワークするか?を判断すること」と、ストプラの上司からは言われました。


戦略とブリーフを作って、クリエイティブに投げて終わり。ではなく、ストプラの立ち位置でありながら、その先の企画までしっかり首を突っ込む。そんなプランナーを目指していきたいです。

JAAA REPORTS「Fresh Eye」

広告会社が集まり、広告を考え、広告を育てるために生まれたJAAA(日本広告業協会)。1950年の発足以来、日本の広告業界を代表する組織です。同協会が、協会の活動や研究内容を共有する機関誌『JAAA REPORTS』では、若手の業界人が日々感じていることを綴るコラム「Fresh Eye」を連載中です。


他のFresh Eyeの記事はこちらから

一覧に戻る