パブリックアフェアーズとは? マカイラ 代表取締役 CEO 藤井宏一郎さんインタビュー『広告界就職ガイド2026』発刊記念【記事公開】

パブリックアフェアーズとは? マカイラ 代表取締役 CEO 藤井宏一郎さんインタビュー『広告界就職ガイド2026』発刊記念【記事公開】

2024年10月28日に発刊された『広告界就職ガイド2026』(宣伝会議発行/マスナビ編集部協力)では型にはまらない多彩な取り組みをされている方々をインタビューしています。今回は、パブリックリレーションズ(PR)の一種であるパブリックアフェアーズ(PA)の第一人者であるマカイラ CEOの藤井宏一郎さんの記事を一部公開します。法改正や自主規制などルールメイキングを支援して、新しいテクノロジーの普及や社会のイノベーションを促すパブリックアフェアーズについて詳しくお聞きしました。(マスナビ編集部)

写真:藤井宏一郎さん
藤井宏一郎さんマカイラ 代表取締役 CEO
科学技術庁・文化庁・文部科学省にて国際政策を中心に従事した後、PR会社フライシュマン・ヒラード・ジャパンにて企業や非営利団体のための政策提言・広報活動を行った。その後、Googleの執行役員を経て、2014年にパブリックアフェアーズ専門ファームのマカイラを設立。
【 目次 】
法律や社会規範などルールメイクしてイノベーションをサポート
ビジネスで社会課題を解決。日本の未来を前進させる不可欠な役割
ルールメイカーから映画脚本家まで多種多様な広告・PRパーソンをインタビューした『広告界就職ガイド2026』発刊!

法律や社会規範などルールメイクしてイノベーションをサポート

──藤井さんは日本における「パブリックアフェアーズ」の第一人者です。この仕事について、まずは教えてください。

企業などの民間団体が事業を達成するためには、市場環境の外にある「公共」を味方にしなくてはならないことがあります。「公共」とは、たとえば政府や自治体、NGO・NPO、業界団体や地域社会、メディア、さらに世論などがそれに当たります。そうした「公共」との関係性を構築し、事業が達成しやすい環境を整備していくのがパブリックアフェアーズの仕事です。



わかりやすい例を挙げます。私はGoogleで公共政策部長を務めていた時に日本版「Google ストリートビュー」の立ち上げに関わりました。この機能は今でこそ多くの方が利用していますが、2008年当時はプライバシーの侵害であるとの批判も多く、あわやサービス停止の寸前までいきました。そのような状況下で、サービスと公共との良好な関係性を構築する必要がありました。そこでGoogleは、行政当局やプライバシー保護の専門家と話し合いを行い、プライバシーに配慮した製品改良などを施し、メディアにもそのような対策をアピールして、なんとかサービスを継続させる方向に持っていきました。


もう一つ近年の仕事の例を挙げると、マカイラでは「電動キックボード」の社会実装に携わりました。電動キックボードは海外で移動手段として普及していて、日本でもニーズがあった。しかし、安全性の面で不安があり、道路交通法上のルールも定まっていませんでした。


そこで我々は、ルール形成の支援を行うことに。まずは2019年に「マイクロモビリティ推進協議会」を設立し、電動キックボードの事業者を一丸とする組織を形成して、関係省庁との対話を重ねやすくしました。その後は国土交通省、経済産業省、自民党のMaaS推進議員連盟、規制担当官庁などと対話を重ね、並行して走行実験なども行い、安全にみんなが利用できるルールづくりを模索しました。そして2023年7月に改正道路交通法が施行され、電動キックボードは16歳以上であれば運転免許不要で、ヘルメット着用は努力義務として、公道で乗れるようになったのです。もちろん今後も安全面に問題がないかを注視しなくてはなりませんが、まずは都市交通の需要過多・地方部の交通手段不足といったラストワンマイルの社会課題の解決へ一石を投じることができました。


別の仕事の例として、自動配送ロボットに関する業界団体「一般社団法人ロボットデリバリー協会」の立ち上げも支援しました。あまり世の中には知られていませんが、2022年に成立した道路交通法改正により、自動配送ロボットの類型の一部である「遠隔操作型小型車」という類型が実現しました。これは、公道で主に商品のデリバリーを行うロボットですが、これまで公道を走っていなかった新たな存在なので、機体が備えるべき安全の基準や運用におけるガイドラインをロボットデリバリー協会で策定しました。


ルールというものは、政府がつくる法令だけでなく、このような業界ルールというものも存在し、このレベルのルールメイキングを支援することもあります。


これらはほんの一部の例ですが、このように新しいビジネスやイノベーションに対して、社会からのハレーションの大きなものでも、みんなが納得できる状態を目指し、事業の達成をアシストするのがパブリックアフェアーズの仕事です。

ビジネスで社会課題を解決。日本の未来を前進させる不可欠な役割

──この仕事をする上で、大切にしているポリシーはありますか?

どんな仕事の依頼も受けるわけではなく、3つのプリンシプル(原則)を持ってクライアントに協力するかを決めています。


1つ目の基準は「ソーシャルグッド」かどうか。社会全体にプラスの事業と言えるかを議論し、そうでない仕事ならば受けません。


2つ目は「イノベーション特化」。Googleストリートビューや電動キックボードのように、既存のルールに当てはまらないものが生まれた時に、既得権益のみを主張して社会の前進を阻止するためだけの仕事はしません。


そして3つ目は「利権をつくらない」。特定の産業や企業だけが利益を得るために、市場全体のパイを不当にゆがめる行為はしないと決めています。



この続きは、新刊『広告界就職ガイド2026』で読むことができます。「日本の生存戦略」「パブリックアフェアーズの可能性」「パブリックアフェアーズに関する職に就くには」などについてお話しいただきました。

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