35歳ビジネスプロデューサーからクリエイティブディレクターに転身/猿人|ENJIN TOKYO野村志郎さんの〈クリ活〉
好評発売中の書籍『クリ活2 クリエイターの就活本』から派生してマスナビでは、さまざまな人のクリ活話をご紹介していきます。
ONE OK ROCK × Monster Hunter Nowのタイアップソングのミュージックビデオ"Make It Out Alive"やロックバンド「ねぐせ。」のドラマ主題歌の企画・制作など多岐にわたるクリエイションをしているENJIN TOKYO クリエイティブディレクターの野村志郎さん。実は35歳をすぎるまでクリエイターではなくビジネスプロデューサー(営業)だったそうです。何がきっかけでクリエイターに転身したのか、クリ活話をお聞きしました。(『広告界就職ガイド2026』より再編集して転載)
- 野村志郎さん猿人│ENJIN TOKYO クリエイティブディレクター / CCO
- “面白いアイデア”で、先進的な映像作品やインタラクティブな体験を生み出すクリエイティブディレクター。これまで世界三大広告賞のカンヌライオンズ、ONE SHOW、CLIO AWARDS、アジア最大級の広告賞SPIKES ASIAグランプリ、グッドデザイン賞など、40以上の国際広告賞を受賞。
- 【 目次 】
- 音楽イベントにDJ活動も! “ゼロイチ”に精を出した学生時代
- 自分が頭の中で想像したものが世の中に姿を現すユニークな仕事
- 広告界就職ガイド2026ではクリエイティブディレクターの具体的な仕事がわかる
音楽イベントにDJ活動も! “ゼロイチ”に精を出した学生時代
──どのような学生だったのでしょうか?
学生時代は、中学生から高校生にかけて海外で生活していました。その後日本に戻りましたが、大学にはほとんど行かず、アルバイトに明け暮れ、興味があることを突き詰める日々を過ごしていました。当時から音楽が好きでDJ活動をしていたのですが、イベントを主催することにハマり、海外からアーティストを呼んだこともありました。ゼロイチで新しいものを生み出すことに夢中になっていました。
そんなわけで大学4年生になってからようやく就職活動を始めました。しかし、希望していた音楽業界は全滅。一緒に就活をしていた音楽好きの友人がたまたま広告会社も受けていたことがきっかけで、広告業界に軸足を移したところ、外資系広告会社から内定をいただきました。
──長らく営業だったとお聞きしました。どのようにしてクリエイターに転身したのでしょうか?
入社後は営業に配属となり、その後10年営業としてキャリアを積みました。2012年、所属していた企業から独立してできたENJIN TOKYOへ移籍。ENJIN TOKYOでもしばらくはビジネスプロデューサーとして働いていましたが、35歳のときにふとしたことでクリエイターとしての初仕事をすることになりました。
その経緯をお伝えすると、当時クリエイティブの仕事に興味はなく、プロフェッショナルなスキルが必要な領域だと感じていたのですが、プロデューサーとしてクリエイティブチームに企画の仕事を託す際、自分ならもっとこうしたいなといった欲が出てくることが多々ありました。そこで、ふと「だったら自分で企画もやったほうが早いかも」と思い立ったのです。
たまたままっさらな新規の案件だったので、生かすも殺すも自分次第。結果、独自開発した自動制御のドローンを使って、クロックスの新作シューズを巨大なディスプレイ台からお客さまの手元に運ぶという、かなり振り切った「空中ストア」が誕生しました。世界初の取り組みということもあり、多くのメディアに露出され大きな話題を呼びました。
これを言うとよく驚かれるのですが、僕はクリエイターとしての下積み経験が一切ない状態でクリエイティブの企画と実装に責任を持つクリエイティブディレクターになっています。美大を出ていなくても、何歳になっても、その気になればどこかにチャンスはあると伝えたいです。
僕自身、就職活動では音楽業界を目指していたもののうまくいきませんでした。しかし、広告業界に入って、有名アーティストのミュージックビデオの企画や監督など、結果として音楽関係の仕事にも数多く携わることができました。
自分が頭の中で想像したものが世の中に姿を現すユニークな仕事
──一足飛びでクリエイティブディレクターになっているのは驚きです。しかも学生時代の希望もかなえていらっしゃる。どのようにして音楽関連の仕事が増えていったのでしょうか?
ONE OK ROCK × Monster Hunter NowのタイアップやRADWIMPS × Adobe Photoshopのリリックアートプロジェクト、Ado x Googleのファンとつくり上げる公式MVなど、どれもクライアントの課題解決を模索して行き着いた施策です。
Monster Hunter Now © 2023 Niantic. © CAPCOM CO., LTD.
広告業界は、なんでもできる可能性を秘めているのが面白いと思っています。たった一人の頭の中で妄想していたアイデアの種が、やがて多くの人を巻き込んで具現化される。CM、グラフィック、デジタル、イベント、映像などさまざまなかたちで世の中に姿を現すのは、とてもユニークで貴重な経験です。このスケールギャップこそが広告業界の大きな魅力。時代の流れとしても、広告会社ができることの範囲はどんどん広がっています。
広告界就職ガイド2026ではクリエイティブディレクターの具体的な仕事がわかる
本記事で、クリエイティブディレクターになるまでの道のりを解説いただきましたが、『広告界就職ガイド2026』( 2024年10月28日発刊)には野村さんが考える「クリエイティブディレクターの仕事」や「ドラマ原案企画など広告から発展した仕事」を紹介しています。書籍詳細はこちらから。