RESEARCH業界・職種を学ぶ 就活・自分を知る
レポート
YOASOBI仕掛け人と映画も手掛ける電通コピーライターがクロストーク! エンタメコンテンツ就活フェス〈イベントレポート〉
マスナビ編集部
業界や領域を超えて活躍している人たちが一同に介する「マスナビ越境フェスvol.1」が2021年7月19日に開催されます。今回は、マスナビ越境フェスの前進であり実験的なイベント「エンタメコンテンツ就活フェス(マスナビ越境フェスvol.0)」のレポートをお届けします。同イベントでは、博報堂×バンダイナムコ、電通×ソニー・ミュージックエンタテインメントの対談が実現。業界の垣根を超えたそれぞれの取り組みについてお話いただきました。
2ブロックでは、電通のコピーライター 阿部広太郎さんとソニー・ミュージックエンタテインメントでYOASOBIプロジェクトの屋代陽平さんと山本秀哉さんのクロストークが行われました。コピーライターでありながら、映画のプロデューサーや音楽の作詞家など領域の越境を続ける阿部さん。そして、音楽事業を主に手がけるソニー・ミュージックエンタテインメントからは、小説投稿サイト「monogatary.com」を立ち上げ、同サイトの企画からYOASOBIプロジェクトを発足させた、屋代さんと山本さん。3人がそれぞれ経験してきたことや、これから求められるマインドについて、対談形式でお届けします。
山本:私も屋代の意見と同じですね。好きなものや得意なことって、一つだけではないと思うんです。きっと複数ある。それらを組み合わせてあげることで、新しいモノ・コトはつくれますよね。
阿部:2020年が特に象徴的だったように、環境は常に変化し続けています。そのため、自分たちにいまできることはなにか。それを考え続けることがとても重要です。時代に適応していくことは常に求められます。
そして適応するための手段は、自分の好きなものに可能性が眠っているように思えます。「なぜ自分はそれを面白いと思うのか?」「それを“見ること”が好きなのか? それとも“つくること”が好きなのか?」その答えを探り続ける姿勢が大切です。これまでと変わらず、一つのものに打ち込み続けるのも立派だし、探した結果、今とは離れたところに旗を立てるのもありだと思います。
──新しい領域の開拓者に求められる素養はなんだと思いますか?
屋代:未知の領域の開拓というのは、決して一人ではできません。その場所でいろいろな人と協業することがすごく大切です。だから仲間づくりが得意である人ほど向いているかと思います。相手にとって、自分がどのような影響を与えるのか。それを考えて、お互いに少しでも良い影響を与えられる関係を構築できると素敵ですよね。
山本:柔軟性は必要になるかと思います。いままで自分がいた場所のセオリーを土台にするのは仕方ないけれど、そこに縛られるだけではいけない。それ以外の視野も持てるようにしておくべきですよね。だから常日頃からさまざまな体験をして、視野を広く持っておくことで、柔軟性も高まっていくのではないかと思います。
阿部:すでに出た話と重なる部分もありますが、「オープンマインド」こそが大事な素養ではないかと思います。新しい領域に進むとき、または今いる場所を思うとき、「そこはすべてが新しいモノ・コトなのか?」「もう過去に誰かが行き着いていて、すでに開拓された部分はあるのか?」などを考えます。その答えを見つけていくためにオープンマインド、つまり一つの業界を越えた情報に興味を持つことが大切になります。広い視野で周りを見渡したとき、意外な結びつきから思わぬ結果やヒントが得られることは、往々にしてありえることです。
──最後に、就活を目前にした学生へメッセージをお願いします。
屋代:いまは本当に大変な時代であると思います。いままでにない条件や境遇で就職活動をしなければならないことは、すごく苦労する部分もあるでしょう。しかし、いつか「この時代に就職活動をした」というバリューを発揮するときが必ずきます。だから悲観的に捉えるのではなく、武器として扱えるようにしてほしいですね。
山本:私が就職活動をしていたころは、社会がリーマンショックの影響を大きく受けていたときでした。そのときに、とにかく自分のことを見つめ直そうと自己分析を徹底しました。好きなものや得意なものはもちろん、その逆に嫌いなことや苦手なことも見つめていきました。そのときの経験は社会人になったいまでも、とても役に立っています。自分のことを見つめ機会は、何度もあることではありませんので、いまだからこそ徹底して取り組んでほしいです。
阿部:自分が持つ、好きな気持ちとはなにか。自分の心に素直に向き合ってほしいです。SNSで多くの人とつながりをつくりやすい現代だから、影響を受けながら、自分のやりたいことを育てていってほしいと思うんです。親や先輩やまわりの友人から「こうしたほうがいい」と言われることもあるかもしれない。それらの助言を受け止めながらも、誰のものでもない自分の人生ですから、自分の気持ちを押し殺さずにしっかりと守ってほしい。自分の人生でなにをしたいのか、自分なりの正解にたどり着くように、就職活動に取り組んでほしいとですね。
登壇者プロフィール
電通 コピーライター/プロデューサー 阿部広太郎氏
2008年、電通入社。人事局に配属されるも、クリエーティブ試験を突破し、入社2年目からコピーライターとして活動を開始。自らの仕事を「言葉の企画」と定義し、映画、テレビ、音楽、イベントなど、エンタメ領域からソーシャル領域まで越境しながら取り組んでいる。映画『アイスと雨音』『君が君で君だ』プロデューサー。パーソナリティーを務めるラジオ番組「#好きに就活 『好き』に進もう羅針盤ラジオ」がAuDeeで放送中。2015年より、BUKATSUDO講座「企画でメシを食っていく」を主宰。最新の著書は『それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
ソニー・ミュージックエンタテインメント REDエージェント部 屋代陽平さん
2012年ソニーミュージックグループ入社。音楽配信ビジネスを経たのち、2017年に小説投稿サイトmonogatary.comを立ち上げる。2019年、同サイトの企画の一貫でYOASOBIのプロジェクトを発足。
ソニー・ミュージックエンタテインメント REDエージェント部 山本秀哉さん
2012年ソニーミュージックグループ入社。CDやゲームのパッケージ制作業務を経て、現在はさまざまなアーティストの宣伝・制作業務に携わる。2019年よりYOASOBIプロジェクトの立ち上げに参画。
──携わったプロジェクトのおもしろかった、つらかったことについて教えてください。
屋代:直近だと、やはりYOASOBIプロジェクトが面白いですね。私はYOASOBIのSNSアカウントの中の人も務めていますが、そこでのユーザーの皆さんとのやり取りは本当に楽しいです。
一方でつらかったのは、小説投稿サイト「monogatary.com」の立ち上げ初期。当初は、会社の外も中も誰も興味を示してくれなかった。だから疎外感をすごく感じた時期でした。でもそのことがあったからこそ、いまは耐え忍んで「将来絶対に見返してやる!」という気持ちにもなれました。そこで火がついたおかげで、いまの結果に結びついているのだと思います。
山本:音楽、もっと広くいえばアートの世界は、人それぞれ独自の感じ方をするのが当たり前です。そのようななかで、企画した私たちの意図した通りに作品を受け取ってもらえた瞬間はとてもうれしくなりますね。また音楽は、その特性として「人に広がっていきやすい」という性質があると思っています。だから、たくさんの人が音楽に触れている様子を垣間見える瞬間もうれしく感じます。
阿部:仕事をしていく中で、私が面白いと感じるのは、「パスがつながる瞬間」ですね。大学時代も含めて8年間、アメフトをしていたのですが、それぞれの動き、連携が決まって、良いプレーが生まれて、お客さんの心までつながる瞬間が好きだったんです。きれいに決まった瞬間の一体感はなにごとにも代えがたい。それと同じで、目の前の仕事でも仕事相手と思いをしっかり分かち合えたとき。そしてその先にまで広がっていったとき。その瞬間にとてもやりがいを感じます。
つらかったのは、頑張っているのに成果が出ないときは苦しいですね。「自分としては手応えがあるし、社内でも好評。でも結果の数字がそれに伴わない…」といった状況のとき。ビジネスである以上、数字は必ず求められる。企画と数字の両面を成立させられるかは、この仕事で一番考えなくてはいけない部分です。
──音楽だけでなく小説に広げていく。広告だけでなく映画や音楽へと広げていく。なぜ現業を超えて活動をしているのでしょうか?
屋代:ソニーグループ自体が新しいことに挑戦することにとてもポジティブだからです。当グループ会社では、ゲーム事業としてPlayStationを開発していますが、これも始まりは「CD-ROMにゲームのデータを焼くとどうなるのか」という疑問が出発点だったと聞きました。データが異なるだけで、やっていることは音楽をCD-ROM に焼くのと同じ考え方だと。このことからもわかるように、新規事業やイノベーションは既存のモノの角度や組み合わせを変えてあげることでも起こり得まるのだと思います。
小説投稿サイト「monogatary.com」でも、作品の源流をつくるということについては、これまでの音楽の制作と共通する部分があります。だからこそ、私たちが活かせるナレッジも多くありましたし、YOASOBIのように音楽へ展開していくこともできたのだと思いますね。