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レポート
同級生と同じ時期に就活スタートすれば大丈夫? ─ 就活を成功させるための心理テクニック 第2回
橋本之克さん
近年大注目の「行動経済学」。不合理な生き物である人間を、心理学と経済学を用いて分析する考え方で、マーケターが消費者インサイト(消費者自身が気づいていない本音や動機)を捉える際にも参考にするメソッドです。就職活動も人の不合理な判断が少なからず起きてしまいます。判断を誤らないように、行動経済学を用いて就活対策をするならば──。『9割の買い物は不要である 行動経済学でわかる「得する人・損する人」』『スゴイ! 行動経済学』などの著者の橋本之克さんによる連載です。
第2回は、同級生と同じ時期に就活をスタートして安心してしまう原因について。目の前の就活だけでなく、将来の仕事から実生活にも役に立つ、就活を成功させるための心理テクニックをお伝えしていきます。(マスナビ編集部)
「同調効果」、原始時代はよかったけど現代では…
周りに合わせた「開始時期」「志望業界」は危険
「同調効果」に似た心理的バイアスに「バンドワゴン効果」があります。これは、多くの人が同じ選択をするほどに、さらに多くの人が同じものを選ぶようになる現象のことです。ちなみにバンドワゴンは、パレードの先頭を走る楽隊車のことです。音楽を鳴らしながら走るバンドワゴンにぞろぞろとついていく群衆の姿から、この効果は名づけられました。身近な例で説明しましょう。ラーメンを食べに行き、並んだ2軒の店の片方だけに行列ができていたとしたら、そちらを選びますよね。これは「バンドワゴン効果」の影響です。
就活においても、自分以外の他人や集団に影響されることがあるはずです。例えば、OB・OG訪問や説明会への参加など動き出す際に、自分の周りが動いていなければ「まだ動かなくても大丈夫だろう」と考えてしまうかもしれません。また、自分の就活の進み具合が早いのか遅いのか悩んだとき、周囲の就活生を基準に判断して、安心(や不安)を感じることもあるでしょう。これらの判断は出遅れや、状況把握の誤りにつながる可能性があります。そこには「同調効果」が影響しています。
ほかにも……
この続きは、新刊『なんで?を解き明かす行動経済学が導く 納得就活~就活を成功させるための心理テクニック~』で読むことができます。
著者プロフィール
マーケティング&ブランディングディレクター/昭和女子大学 現代ビジネス研究所 研究員 橋本之克さん
東京工業大学社会工学科卒業後、読売広告社、日本総合研究所を経て、1998年アサツー ディ・ケイ入社。戦略プランナーとして金融・不動産・環境エネルギー等の多様な業界のクライアント向けに顧客獲得業務を実施。2019年独立。現在は、行動経済学をビジネスに活用する企業向けのコンサルティングや研修講師を行う。また企業や商品に関するブランディング戦略の構築と実施にも携わる。著書に『9割の買い物は不要である 行動経済学でわかる「得する人・損する人」』(秀和システム)、『世界最前線の研究でわかる! スゴい! 行動経済学』(総合法令)ほか。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というギャグは、ビートたけしとビートきよしの漫才コンビ「ツービート」が、1980年頃にはやらせたギャグです。誰もが「赤信号で渡っていけない」ことを知っていますが、みんなが渡っていたら自分も渡ってしまうかも、とも思ってしまいますよね。
こうした、集団のなかでは他人と同じ行動を取ってしまう傾向を「同調効果」と呼びます。この行動は原始時代に端を発しています。当時の人間は、獰猛な動物に囲まれたなかで常に危険を察知し、避けながら暮らしていました。また共同で狩猟を行って食料を得ていました。生き残るために、集団で行動する必要があったのです。そのなかでも、特に集団の結束が固い祖先の生き残りが現代人です。集団から外れず、和を保とうとする人間の習性は、昨今に生まれたわけでなく、DNAに刻み込まれているのです。