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レポート
PRのプロが伝授する自己PRの極意
電通PRコンサルティング 根本陽平さん
皆さんは「PR」という言葉にどんなイメージを持っていますか? 自己PRと聞くと「アピール」や「宣伝」と捉える人が多いと思います。本来「PR」とは、Public Reationsの略称であり、「社会との合意形成」です。それはアピールとは違うのか? 日本のPRトップカンパニーの一つである電通PRコンサルティングの根本陽平さんに、そもそもPRとはなにか、そしてPR視点に基づいた「自己PR」の極意について、お話しいただきます。
PR IMPAKT®メソッド

この6つの要素はたくさん含まれているほどニュースバリューが高くなり、メディアは取り上げやすくなります。例えば、花の生産・流通の業界団体で構成される「日本花き振興協議会」が2020年5月に開催した母の日のキャンペーン。母の日といえばカーネーションを贈る習慣があります。ただこの年は、新型コロナウイルスの感染予防が訴えられている真っ只中でした。花き業界にとって母の日は最大の需要期ですが、店頭に集中すると店内が密になってしまったり、需要拡大していた物流業者に負担をかけないためにも配送の集中を回避しなければなりません。そこで「母の日」ではなく「母の月」というキャンペーンを開催し、母の日に限らず、5月の1カ月間に好きな花を送ろう、と呼びかけました。
通常ならカーネーションを贈るのが定番なところを、「5月の間にいつでも好きな花を」とすることで、カーネーション以外の5月の旬の花々にもフォーカスしました。
これを「PR IMPAKT®」に基づいて解説すると、下記の6つの要素が絶妙に組み込まれたものになっています。
I は母の「日」なのに1 カ月ある
M は史上初、「母の日」が「母の月」になる
P は新型コロナウイルス感染拡大防止
A は需要減に苦しむ生産者
K は「母の月」という造語
T は「母の日」
このキャンペーンは、数多くのメディアやSNSでピックアップされ話題化されました。このようにPR IMPAKT®は、企画を世の中に発表する前のチェック項目としても活用することができます。
この「第三者が取り上げたくなるような情報になっているか」というPR視点は、自己PRにも応用することができるのではないでしょうか。PR視点を活かして自分が言いたいことだけを語るのではなく、他者が思わず語りたくなるような魅力的な自己PRをつくる一助になればと思います。
自己PRには文脈(コンテクスト)磨きが大切
まず、「これから自己PRを書こう」と思っている方に伝えたいのは、「“自分”磨きよりも“文脈”を磨こう」ということです。就職活動が迫る中、自分を磨こうと新たになにかを始めるのは至難の業です。自分がしてきた行動や実績を信じて、その事実(ファクト)をどう伝えたらいいか、文脈(コンテクスト)を磨くことが大切です。
ここで言うコンテクストとはなにか、例を用いて解説します。例えばこのような文章があったとしましょう。
「AとBは週一でデートをしている」
上記は事実、つまりファクトですね。この内容にコンテクストを足すと下記のような文章になります。
「遠距離恋愛をしているAとBは週一でデートをしている」
先ほどの文章と聞こえ方が変わるのではないでしょうか。週一でデートをしていることの凄さが増しますよね。さらにコンテクストを足すと、以下のようになります。
「札幌と那覇で遠距離恋愛をしているAとBは週一でデートをしている」
枕詞がつくだけでファクトの価値がまったく変わってきます。これがコンテクストを磨くということです。ファクトはそのままでも、文脈を磨くことによって「意味の強さ」が変わってくるのです。
さて、「コンテクスト磨き」について説明したところでいよいよ文章の書き方についてです。大前提として、いきなり長い文章を書き始めないことが大切です。自分のなかで伝えたい要素の整理をしてから文章を書き始めることをおすすめします。しかし一体どのように整理すればよいのでしょうか。
自己PRを見つける4つのステップ
そこで先ほどのPR視点を活用して、「学生時代に力を入れたこと」について考えていきます。なお本稿では、PR IMPAKT®を就職活動向けに改良した「PR IMPAKT+」を用いて解説していきます。Inverse(逆説、対立構造)、Most(最上級、初、独自)、Keyword(キーワード、数字)は同じですが、Public(社会性、問題)をProblem(問題、バリア、壁)に、Actors(役者)をAction(行動、実態)に、Trend(時流、流行、反響)をTreasure(得たもの、反響)に変換して、自己分析を進めます。考え方は4つのステップで分かれます。
ステップ1: エピソードに(I 逆説)かM(最上級)があるか
ステップ2: エピソードにP(問題)とA(活動)を見つける
ステップ3: エピソードからT(得たもの)を明示する
ステップ4: エピソードをK(一言)で言ってみる
自己PR向けに変換したPR IMPAKT+メソッド
こちらで紹介した自己PRの書き方は、この通りやれば必ずうまくいく、というものではありません。ただ、「なかなかうまく自己PRが書けない」という方は一度試してみてください。PR視点がみなさんの就職活動の手助けになればうれしいです。
自己PR文を考えるためのトレーニングシート
コラム執筆者プロフィール
根本陽平さん
電通PR コンサルティングPR プロデューサー
2008年電通パブリックリレーションズ入社。現在は、情報流通デザイン局 コミュニケーションデザイン部 部長。“PR 思考”でプロモーションから商品開発・企業活動の全体設計を行う。宣伝会議「オンライン動画 プランニング実践講座」「バズクリエイティブ講座」講師。共著に『PR 思考』『自治体PR 戦略』『戦略思考の魅力度ブランディング』
※コラム執筆時点の所属・肩書となります
またコラム執筆者の電通PRコンサ ルティングの根本陽平さん等によるセミナーも開催されます。「もっと詳しく聞いてみたい!」という方は併せてご参加ください。
今回は、皆さんにPRの発想法を元にした自己PRのコツについて解説します。その前に、そもそも「PR」とはなにかについて説明します。
PRとはPublic Relationsの略称で、社会(Public)と良好な関係をつくる(Relations)ためのコミュニケーションを指します。もう少し具体的にいうと、企業やブランド、組織が、事業を通して社会に貢献する姿を見せることで、ステークホルダーや生活者と信頼関係を築くことです。多様な利害や価値観が混在する社会で、ステークホルダーから信頼を得るためには、合意形成(意見の一致)が不可欠です。
例えば鉄道会社が新たに線路をひく際に、既にそこに住んでいる地域住民に納得してもらわないといけないという場合。企業から一方的に伝えるだけでは不十分で、地域の方々が信頼している自治体や大学教授、メディアなど影響力をもつ第三者から、その必要性を説いていったという話があります。
社会との合意形成の手段はさまざまですが、代表的なものの一つにメディアの記事や番組で取り上げてもらう「パプリシティ」があります。自らが「語る」のではなく、メディアという、すでに信頼されて影響力のある媒体に「語られる」ことで、情報の受け取り手に良いイメージを持ってもらうことが期待できます。
しかし、このようなパブリシティ獲得のためには、戦略的な情報の組み立てが必要です。数えきれないほどの企業やブランドの発信情報の中からメディアが取り上げるのは、ニュースバリューがある、つまり社会の関心や問題に関連性のあるようなトピックや、前例がない珍しい取り組みなどです。電通PRコンサルティングでは、長年培われてきたノウハウから、メディアが取り上げたくなる視点を6つにまとめメソッドにしています。Inverse、Most、Public、Actor、Keyword、Trendの6つの頭文字から「PR IMPAKT®」と名付けました。