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レポート

自分とは何者なのか?

電通コピーライター 勝浦雅彦さん

自分とは何者なのか?

2022年6月現在、大学3年生等(2024年卒)はインターンシップへの参加を検討している人も多いはず。インターンシップ参加のための選考対策を始めた人が、最初に困惑するのは「自己分析」「自己PR」。これまで自分自身に向き合ってこず内面の見つめ方がわからない。自分をアピールしたことがなく尻込みしてしまう。こういった悩みが多く寄せられます。しかし就職活動は「自分が何者か」を知るきっかけであり「自分の価値を言葉にする」ものです。

これまで2000人以上に就活指導をした電通 コピーライターの勝浦雅彦さんが「自己分析」「自己PR」のヒントを教えてくれました。

※本稿は、勝浦雅彦『つながるための言葉 「伝わらない」は当たり前』(光文社)の一部を転載・再編集したものです。

自分とは何者なのか? 考えてみる

あなたは何者ですか?――いきなりそう問われた時、あなたはなんて答えるでしょうか。多くの人が言葉につまるでしょう。会社員? 趣味人? 母親? 旅人? 社長? 思い浮かぶのは千差万別だと思います。

「自分とは何者なのか」

実は、本書で最も重要なキーワードの一つがこれです。私はこれまで大学や広告の学校で多くの講義を担当させていただきましたが、冒頭に必ずこのことを聞いて
います。

え、どうして「ひとこと」を言い表すために自己分析めいたものが必要なの? 早く実例とか発想法を教えてよ! あなたはそう思うかもしれません。

「即効性のあるメソッドを求めて買ったのに、本題はまだ?」
「ビジネス書で人生大逆転できるって聞いたもんで、購入したんですけどー、なんかあなた、話長いですね」

この時点でそう思っている方、残念です。この本には、“即効性
のあるおかしな造語のメソッドも、人生を一発逆転する方法も載っていません。一人のコピーライターの苦悩と仮説と希望が書いてあります。

焦ってはいけません。だいたいビジネス書は結論を急ぎすぎます。最初の数ページを読めばもう言いたいことはわかるとか、何ならタイトルが結論になっていると
か、そういうのが多すぎます。この本はそんな風に急いで読まれた挙句、本棚の目立たないところやブックオフに行くようなものにしたくないのです。本を読むことは船に乗って旅をするようなもの。速く進みすぎて窓の景色も見えない高速艇に乗って、旅が楽しくなるでしょうか。ゆっくり着実にいきましょう。

言葉とは、自分を知らずして発見できることも、深まることもありません。
スポーツに喩えてみましょう。陸上で9秒台を出す選手のメソッド、あるいは野球のバッティングにおいて飛距離を150メートルは出すフォームや力学は既に公開されています。みな、隠すこともしません。

なぜなら、そのメソッドはその選手の体つきや身体能力によって最適化されたものだからです。「真似しようと思ってもできない」から周知できるのです。そうで
ないなら、イチローやボンズ、ソーサのような打者が世の中に溢れているはずです。つまり、自分を知り尽くした先にしか理想のフォームはないのです。

そして言葉にもまったく同じ理論が当てはまります。
どんな言葉も、

①「思考が脳内でドロドロした状態のまま留まる時期」
②「あるベクトルが加わり言葉としてかたちづくられる時期」
③「外の世界に最適化されて出ていく瞬間」

に分けられます。

①の時点での思考法は世にあり、シミュレーションすることは誰にでも可能です。
しかし、②において加わる「ベクトル」とは言葉の原型となる方向性のことで、あなたの主義・主張・正義・心情・愛・哲学、つまり思考におけるあなた自身が方向性となるのです。

あなたとまったく同じことを考えている人はいませんよね。
思考はいわば指紋のように、一人一人違います。だからこそ、「自分とは何者なのか」ということを日々意識する必要があるのです。

では、「自分とは何者なのか」を探すためにはどうするのか。よく自己分析、自分探しと称したセミナーや講座があります。
そういうものに通わなくても結構です。よく自分探しの旅と称して、世界を放浪する若者がいますが、あなたは、今座って本書を読んでいる場所にいます。顔を上げてください。自分が窓ガラスに映っているはずです。その人と向き合ってください。特別な場所や旅に出なくても大丈夫です。特殊な環境に答えはありません。普段の自分と、しっかり向き合い、絡まった糸をほどくように自分の奥底に眠っている思考を見つけ出し紡いでいくことが大事です。

STEP1 まず自分を徹底的に洗い出す「自分への質問状」

では、まずノートを用意して自分について書き出してみましょう。多分人生において「自己分析」を真面目にやるのは、就職活動の時くらいではないでしょうか。これは、長年にわたって培われた就活プログラムの中に「自己分析」が組み込まれているからですが、たとえあなたが、30代だろうと、40代だろうと、これは時に応じて行うといいと思います。

きっと、過去の自分と今の自分がまったく同じではなく、変わってきていることに気づくでしょう。身体の成長は止まっても、心は成長し続けるのです。
木の幹である自分の「本質」は変わらなくても、枝葉である思考は日々変化しています。

以下のようなことを「自分への質問状」として問いかけながら書き出してみてください。

・自分とは何者なのか?
・自分は何をしたいのか?
・自分は何がやりたくないのか?
・自分は何が好きなのか?
・自分は何が嫌いなのか?
・自分の長所は?
・自分の短所は?
・自分にはリーダーシップはあるか?
・自分にはユーモアセンスはあるか?
・自分は打たれ強いか? 打たれ弱いか?
・自分は熱いタイプか? クールなタイプか?

この時、できるだけ短く簡潔に、自分の意見を「言語化」するように心がけてください
難解な言葉は使わなくて結構です。私は最強の思考整理法は、「言語化して紙に落とすこと」と「それを音読すること」だと考えています。文字になった自分の考えを見ることによって始まるのは何でしょう? そう、自分との対話です。さらに、自分自身から発せられた言葉――言語化された言葉なら既に自分の血肉となっているわけですが、他人の言葉やアイディアを肉体化する時に最も有効なのは声に出して読むことです。肉声を通じて、血肉化するわけです。受験エリートたちの多くが口々に「音読」の重要性を訴えるのも、知識を血肉化するためにはどうするか、という課題への明快な答えだからです。ぜひ、実践してみてください。

“リトル自分
との対話
一度お仕事でご一緒させていただいたサッカーの本田圭佑さんが「リトルホンダ」という自分を客観的に見る存在をつくり出し、思考や決定のプロセスで対話をしていたのは有名な話です。

心がけてほしいのは「自分に嘘をつかないために、自分と話す」ということです。人と話しながらだと、恥ずかしくてつい飾りがちな自分も、自分自身となら素直
に話せるはずです。私も、デスクに鏡を置いてよく自分と話をします。話に熱中してつい声を出したり、笑ったりすると、もれなく心配されたり、医者に連れていかれそうになったりするので、ほどほどにしておいたほうがいいでしょう。

のちの就活・転職の章でも述べますが、自己分析というのはとかく辛いものです。正確にいうと、みな自分のことは好きだけど、「紙に落とす」行為が死ぬほど苦
手なのです。日記を毎日書いていると聞くと「えらいね!」と思うでしょ? みんながみんな、自分のことを紙に書きたくてうずうずしているなら、そんな発想になりませんよね。

どうでしょう。やるべきことを聞いて面倒くさいと思ったのではないでしょうか。それは正常な反応なのです。そして「書かない、実践しない言い訳」を探すため
に、「こんなことをやっても何も変わらない」「成果が出るエビデンスがない」「だいいち、この本書いたこいつ誰だよ(いや、そこはプロフィール欄を読んでください)」といった言葉が、頭を駆け巡ったのではないですか。

そう、人間はみんな、やらない言い訳の天才なのです。
もし、そんな自分を客観的に見ているもう一人の“リトル自分がいるならこう話しかけてみてください。「よう相棒、ユーチューブを一本見る時間、SNSに世の中や政治の不満をしこたま書き込む時間を使って、この勝浦ってやつのチートに乗ってみるのも一興じゃないか? だってさ、お前が変わるほうが、世の中を変えるより何倍も楽だぜ」と。

STEP2 「ジョハリの窓(心理学モデル)」

STEP1で「自分とはこういう人間である(はずだ)」というおぼろげな像を掴んだら、それを他人の客観的な視点で検証していきます。

ここでは「ジョハリの窓」という有名な心理分析モデルを使います。
これは1955年にアメリカの心理学者、ジョセフ・ルフトとハリ・インガムが発表した自己分析フレームワークです。4つの窓のような図に自分と他者の視点を入れて自己分析をすることで「4つの自分」を知り、「自分が知っている自分」と「他人が知っている自分」とのギャップを浮き彫りにすることができます。

4つの自分とは、

「自分も他者も知っている自分(開放)」
「自分は知っているが、他者は知らない自分(秘密)」
「自分は知らないが、他者は知っている自分(盲点)」
「自分も他者も知らない自分(未知)」

のことです。

早速、同僚や友人、恋人とやってみてください。ある程度人数(3~10人)がいた方がいいといわれていますが、2人でも構いません(恋人同士なら2人なのは当
然ですね)。

具体的には、

①紙A・Bとペンを人数分用意する。
②紙Aには4つの窓を書きます。
③紙Bには、あらかじめ用意した人の性格・能力を表す「要素」から、自分と相手に当てはまると思えるものをそれぞれ書いていきましょう。

要素例:「パワフル」「知的」「感情的」「直感的」「アイディアがある」「段取り力がある」「向上心がある」「行動力がある」「表現が豊か」「
話し上手」「聞き上手」「親切」「リーダー的資質がある」「空気が読める」「事情通」「根性がある」「責任感がある」「プライドが高い」「自信家」「頑固」「真面目」「慎重」「ケチ」など。

このように、簡易で直感的に選べる要素をなるべく多く記入しておくことがポイントです。
「モテる」「おしゃれ」「コミュ力がある」「ギャグセンス」なんて、柔らかいものを追加していっても結構です。

④手元には、4つの窓が書かれた紙と、自分が自分について書いた「要素」の紙、そして相手が書いた自分についての「要素」の紙が人数分あるはずで
す。
⑤それでは書き込んでいきましょう。手元の紙を見比べながら、自分が書いた要素と相手が書いた要素が一致していれば「開放の窓」に「要素」を記入。同じ要領で、相手が書いて自分が書いていない「要素」を「盲点の窓」に、自分が書いて相手が書いていない「要素」を「秘密の窓」に、自分も相手も書いていない「要素」を「未知の窓」に記入します。
⑥その結果が、自分と相手の認識の一致とズレの一覧図になります。
⑦結果について、なぜこうなったのか、なぜそう思ったのか、などを話し合って理解を深めてみてください。

補足すると、

「開放」は、あなたの社会的なキャラクターを象徴しています。
「秘密」は、あなたがまだ表現できていないキャラクターを象徴しています。
「盲点」は、まだあなたが客観的に気づけていない他者が思うキャラクターを象徴しています。
「未知」は、あなたも他者も思いもしないキャラクターを象徴しています。

4項目の中で大切なのは、自分と相手の考えが一致している「開放の窓」です。この項目が多いほど「あなたの伝えたい自分が相手に伝わっている」状態だか
らです。他の窓から、開放の窓へどうやってあなたの魅力を移行させていくのかを考え、ディスカッションしてみてください。それはすなわち、何を伝えればいいのか、そのためにどう行動を変えていくのか、にもつながっていきます。

このように、自分を客観的に見ることは非常に大事です。
私の大学の集中講義では、必ず冒頭にこれを実施しています。

「え? 広告論の授業でなぜ自己分析をしなければいけないの? めんどくせーよ」と最初はしがっていた学生も、これを終えると目の色が変わります。自分を知らずに、他者に何かを伝えようとしていたことに気がつくのです。多くの学びがそうであるように、急がば回れなのです。

小学生の頃、授業でこれをやる機会があり、ショックを受けた記憶があります。
当時、自分のことを「繊細で内向的な人物」だと評価していたのです。いつも教室の隅で本を読んで静かに空想をしているような子供だと思い込んでいました。しかし、先生やクラスメートが私に持っていた印象は「明るくてお調子者の勝浦くん」でした。本を閉じて、みんなと騒いでいる時の私をクラスメートたちは「本来の勝浦くん」だと感じていたというわけですね。

自己評価や自己分析は、他人のそれとズレることが多いのです。そのズレを知ることで自分を客観的に理解し、自分はどうしたいのか、どうあるべきなのかを考え
ることができます。

「つながるための言葉」をつくり、相手に伝えていくためには「なぜあなたがそれを伝えることができるのか」を知る
という助走が必要なのです。

STEP3 「自分ウィキペディア」を書く

最後に、STEP1・2でやったことを集約するために、私の講義では必ず「自分ウィキペディア」、つまり自分史を書いてもらっています。自分がどこで生まれ何を考えて、何を選択して生きてきたのか。過去・現在・そしてまだ叶っていなくても「こうありたい自分」をまとめてもらいます。ウィキペディア形式にするのは、ネット社会において万人に親しまれていて、なおかつ整理しやすいフォーマットであることが挙げられます。

ではこの中でいちばん大事な情報は何でしょう? 
そう、「自分とは何者なのか」――冒頭の一文をどう表現するか、が大事です。

あなたは初めて会う人に、どんな風に思われたいでしょうか。なんと名乗るのでしょうか。まず職業で答えるのが一般的です。会社員でしょうか? それともビジネスパーソンでしょうか? 学生? OL? 公務員? 漁師? 教師? 師? 職業ではなく職種で表現する人もいます。営業・SE・デザイナー・プログラマー……。あるいは、趣味を書く人もいるでしょう。フットボーラー・コレクター・ゲーマー・バイカー・ハガキ職人など。

私はかつて会社のデスクの目立つ位置に「生涯一釣り師」と大きく書かれたA3の紙を貼っている先輩を見たことがあります。その方にとって、自分のアイデンテ
ィティは「釣り」だったのでしょう。おそらくもう定年退職されているでしょうが、今もどこかの海で釣り糸を垂らしていて、釣り仲間にも恵まれている姿を想像してしまいます。

当たり前ですが、世の中には仕事命の人もいれば、趣味第一、家族LOVEの人もいます。自分が大切にしているものを自分の接頭辞に持ってくる。それはどんど
んやるべきです。好きなことを語っている時、人はいちばんいい顔をしているのですから。

さらに、既成概念にとらわれず、もっとアレンジをしていいのです。ここにオリジナルの修飾語をつけてみましょう。歌って踊れるデザイナー。世界を旅する経理のプロ。昼の顔は保育士、夜の顔はバーテンダー。これは実際に、私が講義を通じて会った方たちです。みな嬉しそうに、何者かを表現できた自分を解説してくれました。

ツイッターのアカウント名なんかもそうですよね。名前の後に@をつけて「@どん底から○○した二十代社長」「@美と格闘技を追求するワーママ」「@売り上げ○○
を達成した週休3日営業マン」といった具合に、他人から見てわかりやすく、数値や意外性のある単語を組み合わせて記憶に残りやすい印象づけを行っています。

もちろん、これに正解はありません。過度に誇張する必要もありません。どう自分を表現すればあなたがしっくりくるのか、このことで自分を知ってほしい、こん
なことが好きだと胸を張れるか、で決めればいいのです。

さらにさらに、それはあなたが成長していく過程でどんどん変わっていきます。
学生が起業家に。サラリーマンが陶芸家に。OLがコピーライターに。暴走族が政治家に。俳優がユーチューバーに(……これはよくありますね)。お笑い芸人がボクサーに、画家に、ヨガの達人に(……これは鶴太郎さんですね)。

そう、あなたが、今のあなたではない誰かに
あなたがいちばんあなたらしくいられる状態をひとことで言い表したなら、そこがあなたの現在地です。そこにたどり着いたなら、次の章へ進んでいきましょう。

「自分とは何者か」を知ること。それが「つながるための言葉」への第一歩なのです。

著者プロフィール

勝浦雅彦さん
電通 コピーライター・クリエーティブディレクター

法政大在学中に、シンボルタワー「ボアソナード・タワー」の命名者になり、学長表彰を受ける。新入社員時代に役員に直訴して、営業からクリエーティブに転局。まったく芽が出ず部署をクビになるが、東京を飛び出し不屈の精神でコピーを書き続ける。ある時「なぜ、人はつながりたいのか」に気づき、運命が好転。約10年間の非正規雇用期間を「言葉」で乗り越え電通入社。15年以上、大学や教育講座の講師を務め、広告の枠からはみ出したコミュニケーション技術の講義を行い多くの同志とふれあい、テレビ、雑誌、新聞等にも出演。クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、ADFEST FILM最高賞、Cannes Lionsなど国内外の受賞多数。TCC会員。宣伝会議講師。法政大学特別講師。「つくる人の会(仮)」主宰。初著書『つながるための言葉 「伝わらない」は当たり前』(光文社)発売中。




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