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レポート

なぜあなたのメールや企画書、エントリーシートは読みにくいのか?

電通 コピーライター 橋口幸生さん

なぜあなたのメールや企画書、エントリーシートは読みにくいのか?

2023年10月現在、大学3年生等(2025年卒)は秋や冬に開催されるインターンシップや、早期選考への応募を検討している人も多いはず。インターンシップや本選考に応募するための選考対策を始めた人が、最初にぶつかる壁がエントリーシートなのではないでしょうか。自分の魅力をどうアピールしたら良いのかわからない。言いたいことを簡潔にまとめられない。このような悩みが多く寄せられます。

そこで、電通 コピーライターの橋口幸生さんに「なぜビジネスの文章は読みづらいのか?」「読みやすくするには何を意識したら良いのか?」を教えてもらいました。

※本稿は、橋口幸生さんの著書『言葉ダイエット メール、企画書、就職活動が変わる最強の文章術』(宣伝会議)の冒頭を転載・再編集したものです。

なぜあなたのメールや企画書、エントリーシートは読みにくいのか?

皆さんは毎日仕事で、次のような文章に接しているのではないでしょうか。

BEFORE ダイエット前
今、デジタル・トランスフォーメーションが加速する日本のマーケットにおいて、幅広いデモグラフィーのターゲットにエンゲージメントできるシンプルな文章を書くソリューションは、全ビジネスパーソンのコンピテンスになりつつあると考えます。そうした文章術の本が日本中のどの書店においてもディスプレイされているファクトも、そのエビデンスと言えます。しかし、そうしたコンセプトの文章術の本は、どれもスキームや本質をインプットすることが可能ですが、足りない視点があるのも事実です。そう深掘りしたことが、私がこの本を執筆させていただくことになったきっかけでした。

次の文章を読んでみてください。

AFTER  ダイエット後
読みやすい文章を書くスキルは、すべてのビジネスで必要だ。実際、書店には文章術の本がたくさん並べられている。優れたものもたくさんある。しかしどれも「ある視点」が欠けている。そう考えたことが、私が本書を執筆したきっかけだ。

同じ内容でも、後者のほうがずっと読みやすいですよね。理由は明らかです。前者の文字数は271文字、後者の109文字の2倍以上あります。つまり長過ぎるのです。

記事、小説、手紙、日記などなど。世の中には数多くの文章がありますが、読みにくさという点ではビジネス文章がダントツです。遠回しで、小難しくて、カタカナだらけで、何より長い! 読むだけでひと仕事した感じすらします。ガマンして読むうちに、いつしか自分も同様の文章を書くクセがついてしまう。そんな悪循環が起きているのではないでしょうか。

筆者の本業はコピーライターです。この本を書こうと思ったのは、仕事で接する文章が長くて読みづらいと、ずーっと感じていたからです。コピーライターの仕事は、オリエンシートを受け取ることからはじまります。オリエンシートとは、どんな広告を作りたいのかが記された発注書のことです。しかし多くの場合、一読しただけでは何を書いてあるのか全然分かりません。100ページ以上あるのに結局何をしたいのか不明なんてことはザラです。

オリエンを受けて広告会社が提案する資料も、パワポの隅から隅まで文字ビッシリで、妙な色の矢印が飛び交い……という場合が多々あります。広告に限らず、どの業界も同じような状況ではないでしょうか。こうなってしまう理由は、たったひとつです。

ビジネスにおいて、人は書きすぎてしまうのです。

「書く」より「消す」が文章を決める

● 人は、書くことと、消すことで、書いている。(トンボ鉛筆 2006年)


…というコピーがあります。「消すこと」という言葉でわかるように、鉛筆ではなく「消しゴム」のコピーです。でも、僕はここに書くことの本質が表現されていると思っています。つまり「書くこと」以上に「消すこと」が重要なんです。

思っていることをそのまま書くのは、誰でもできます。そこから必要な内容を取捨選択するのが難しいのです。ビジネスは真剣勝負。書いた内容が伝わるかどうか不安なので、どうしても言葉を重ねたくなります。得意先や上司に向けた文章であれば、なおさらです。就職活動であれば、エントリーシートの出来不出来は人生を左右しかねません。思いつく限りのアピールポイントを書き連ねる人も多いでしょう。結果、でっぷりと贅肉がついた読みにくい文章になってしまうのです。真面目で気配りのできる人ほど、この罠にはまる傾向があります。

今後、社会的にも長い文章は敬遠されるようになるでしょう。総務省の調査によると、
1996年から2006年までの10年間で、世の中の情報量は530倍に増えました。現在では、流通している情報量が、消費できる情報量の2万倍に達すると言われています(平成18年度情報流通センサス報告書)。こうした天文学的な量の情報を突破してはじめて、あなたの文章は、相手に届くのです。大事なことほど、短時間で効率的に伝えなくてはいけません。そこで役に立つスキルが、言葉の贅肉を削ぎ落とす「言葉ダイエット」です。

僕がこの事に気づけたのは、作家やライターではなく、「コピーライター」だったからだと思います。コピーライターは書く仕事だと思われていますが、実際は「消す」仕事なんです。

広告を出すにはたくさんのお金がかかります。広告主はもとを取るために、あれもこれもと情報を詰め込もうとします。しかし、ほとんどのテレビ
CM15秒しかありません。ポスターなんて数秒見られればいいほうでしょう。ウェブだって、せいぜい23分です。いらない情報と判断された瞬間、停止ボタンを押されます。そんな状況で、効率的に伝えるために情報を取捨選択するのが、コピーライターなのです。

「才能」ではない。「スキル」である

「文才」という言葉が示しているように、読みやすい文章が書けるのは才能だと、多くの人が思っています。これは大きな誤解です。読みやすい文章には明確な基準があります。必要なのは才能ではなく、基準に沿って書く「スキル」です。「スキル」なのですぐに覚えて、すぐに使えます。そして使うほどに上達します。

「言葉ダイエット」のスキルとは、どのようなものなのか?

本書で説明してゆきます。

橋口幸生さんが登壇するセミナーを開催!

実際の書籍で紹介されたスキルは20231030日(月)開催のセミナー「エントリーシートを改善したい人必見! 「言葉ダイエット」著者の電通コピーライターによる選考対策セミナー」にて詳しく解説いただきます。予約時に自己PRを提出いただいた方の内容を引用しながら、公開添削も行っていただくコーナーも。詳細はこちらから。

著者プロフィール

橋口幸生さん
電通 コピーライター


ソーシャルメディアで支持されるコピー、企画を得意とする。代表作はニデック「世界を動かす。未来を変える」、伊藤忠商事「キミのなりたいものっ展?」、アデカ「地味だけど、すごい」、鬼平犯科帳25周年ポスター、「世界ダウン症の日」新聞広告、貞子3D「世界でいちばん、3Dが似合う女」など。『言葉ダイエット』(宣伝会議刊)、『100案思考』(マガジンハウス刊)著者。TCC会員。Twitterフォロワー2万人超。趣味は映画観賞。
XTwitter@yukio8494

 

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