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レポート

「自分のため、社会のため」はたらくを考える就活セミナー~広告だからできること~〈イベントレポート〉

マスナビ編集部

「自分のため、社会のため」はたらくを考える就活セミナー~広告だからできること~〈イベントレポート〉

周りに合わせて就活を意識し始めたものの、そもそもはたらくことがイメージできていない。そのような人も多いはず。そんなときには、先輩のリアルな声を聞くのが有効だ。広告業界専門の就職支援サイト「マスナビ」と、日本を代表する広告会社約150社がメンバーとなっている業界団体「日本広告業協会(JAAA)」が共催で「『自分のため、社会のため』はたらくを考える就活セミナー~広告だからできること~」を2023年6月に開催した。当日は、4人の広告パーソンから、どのような考え方で仕事に取り組み、自分と社会をどのようにつなげて仕事をしているかを聞いた。

広告業界には、個人や社会の課題を広告会社に入ることで解決している人や、個人の興味・関心をもとに広告会社を通じて自己実現した人など、さまざまな人が活躍している。セミナーには、アイレップのコピーライター大重恵里さん、朝日広告社でメタバースやeスポーツの企画をする花見雅葵さん、オプトでデジタルマーケターとして従事しつつ、個人でDXプロダクトを開発・販売する会社を起業した野嶋友博さん、博報堂のクリエイティブディレクター/コピーライターの山﨑博司さんを招き、それぞれの仕事観を伺った。

学生当時、はたらくことへどんなイメージを持っていましたか?

大重:私は大学生の頃アルバイト三昧だったので、就職もその延長線上で考えていました。お客さんにとっては、アルバイトスタッフも社員も同じ店員だし、私自身も「アルバイトという立場であっても、責任をもって社員同様に最高の品質で仕事するべき」と思っていたんです。ただ“はたらく”ことをより意識したのは、糸井重里さんが書かれた「サラリーマンという仕事はありません。」(西武セゾングループ)のコピーに触れたとき。会社の名前ではなく、自分の名前で仕事ができるようにならないといけないと、身が引き締まったのを覚えています。

野嶋:私も同じで、職種や会社といった名前ではなく、自分の能力を身につける場所
=会社という意識がありました。学生時代から、ECサイト制作の飛び込み営業や就活イベントの営業をしていたことで、1円を稼ぐ難しさを痛感したことも影響しています。早くマーケティングのスキルを身につけて自分で稼げるようにならないと、という危機感がありました。

花見:自分は父の背中を見て育ったのが大きく影響しています。父が飛行機好きで、航空関係の仕事に没頭していて、「自分が面白いと思うことを仕事にしないと人生楽しくないぞ」と語っていたのが、今の指針になっています。


山﨑:「仕事を頑張ったほうが、人生が豊かになる」とはなんとなく思っていましたね。あとは自分が考えたことで誰かが喜んでくれる、そんな仕事ができたら楽しいだろうなとも感じていました。

実際にはたらいてみていかがでしたか?

山﨑:いまはすごく楽しいけど、入社してからしばらくは大変でした。優秀な先輩方に囲まれ、若手は早々に結果が出るわけではないので。地道な下積み期間が34年はありました。でもこの期間で基礎体力が付き、大重さん・野嶋さんの話につながりますが、自分の中の軸ができた感覚があります。

花見:楽しいだけでなく、ビジネス観点が常に求められるのは、はたらいてからわかりました。絵空事だけでなく、ビジネス(売上)に寄与するのか。クライアント・自社双方にとって寄与しているのかです。

野嶋:デジタルマーケティングだと数字に直結して表れる面白さがあります。自分の考えたアイデア・クリエイティブが、クライアントの事業成長に直接寄与できて、お客さまも喜んでくださるとうれしいですね。はたらく前と後のギャップは、自分の裁量で動ける範囲が広くて、いい意味で驚きがありました。

今回のテーマは「自分と社会をつなぐ」ですが、皆さんどのようにつなげていますか?

山﨑:最近、子どもが生まれました。これがきっかけとなって絵本をつくってみました。『答えのない道徳の問題 どう解く?』というタイトル。答えのない問いについて親子でコミュニケーションできるツールが必要だと思ってのことです。それがさらに発展して、マクドナルドのハッピーセットのおもちゃ(絵本)の仕事にもつながりました。



大重:私事と仕事が相互に影響していますよね。日々のちょっとした違和感に気づいて、仕事につながったなんてことも。それがこの業界ならではですごく面白いです。

野嶋:まさに「小さな違和感」から私もプロダクトを開発しました。自分の結婚式のときに、手紙で送る招待状に疑問を持ちました。コロナ禍でお手製のものへの忌避感もある。送付にも手間がかかる。この違和感から、
LINEで簡単に招待や出席確認できるサービスを立ち上げました。


花見:自分はゲームがすごく好きで、なんとか仕事にしたいと思っていました。入社2年目で、自らeスポーツ主催企業のパートナーを見つけ出し、さらにスポンサーとなるクライアントも開拓しました。さきほどお伝えしたようにビジネス視点を会社にも伝え、会社も後押ししてくれました。またeスポーツ関連企業ではなく広告会社だからこそできることがあるとも強く感じました。市場を大きく広げるためのノウハウ、アイデア力やメディア力は広告会社だからこそ持っているものです。

僕の場合は
eスポーツでしたが、広告会社には自分のコンテンツへの“偏愛”を仕事に活かす土壌があります。アニメやマンガを企画に組み込む人もいます。最近では、クライアントの課題解決にVTuberを絡めた人もいました。

最後に、これからどうはたらいていきたいのか?について伺っていきます。

野嶋:ChatGPTをはじめとする生成AIなどのキーワードが注目されています。そのなかで人が担うことは何か、自動化したほうが良いことは何か、はたらく範囲への関心が高まっているように思います。まだ自分の中に明確な答えはないのですが、いまの社会に何が刺さるのかは、いまを生きている人間にしか汲み取れない。そこに人がはたらく意味がある気がします。それは、社会的な関心や人の趣味嗜好の変遷など過去のデータは学習できますが、現在や未来を予想することは難しいからだと考えています。結婚式の招待状デジタル化サービスはまさにそう。コロナ禍という“いま”の状況を踏まえて、ニーズがあることをまざまざと感じて、サービスの提供を開始しました。

大重:私はシンプルに「楽しくはたらきたい」。営業からクリエイティブという職種の変化に加えて、大阪から東京へ働く場所も変わるという経験をしてきたので、次の変化にもワクワクしています。これからはたらくことになる皆さんも、入社後どんな配置になっていっても、今まで見たことのない視点や角度から自分や社会を見られるという前向きな思考に変えてみることが大事です。

花見:わがままに見えるかもしれませんが、やりたいこと、好きなことを仕事にして、楽しく働いていきたいですね。さらに言うと、自分の介在価値があると、より楽しくなるはず。すでに世の中ごと化している、言い換えると広まっているものを仕事にしても、自分の存在価値が発揮できない。だから世の中の動きに敏感になって、誰よりも早くトレンドを取り込んで、自分がトレンドセッター、イノベーターになってはたらいていきたいですね。いまは
eスポーツで自分の価値を発揮できていますが、今後はVRやメタバース、WEB3といった領域に広げていきたいです。

山﨑:僕の場合オン・オフがあまりなくて、はたらいている意識がないかもしれません。普段の生活が学びになり、仕事にも活きる。仕事で学んだことが生活に還元されることもある。生活と仕事は地続きで、いい循環になっています。


登壇者プロフィール




大重恵里さん 株式会社アイレップ コピーライター
1996年生まれ、ギリギリのZ世代。2018年にアイレップへ新卒入社。大阪営業所に所属し、西日本エリアを中心に幅広い業種業界のクライアント企業を担当。アカウントプランナーとして、マーケティング戦略立案や運用成果改善コンサルティングなどを経験したのち、2021年よりクリエイティブチームへ異動、コピーライターへ転身。一気通貫型のコミュニケーションを大切に、コンセプト設計から生活者が触れるコンテンツの企画・制作まで、メディア・領域を問わずさまざまな施策でのコピーワークに携わる。


花見雅葵さん 株式会社朝日広告社 DXデザイン開発チーム
2018年朝日広告社に入社。イベントプランナーとしてイベント中心の企画制作、ディレクション業務を経て、2022年よりデジタルとクリエイティビティーを掛け合わせCXソリューションを創出するDXデザイン開発チームに従事。テクノロジーの進化に伴い企業の在り方、生活者スタイルが変換している中、Z世代の視点で未来の広告ビジネスを探索中。現在はメタバースやeスポーツ案件のプランニングから実行までを担当。



野嶋友博さん 株式会社オプト 第1営業本部営業6部/株式会社アッカーマン 代表取締役社長
2015年新卒でオプトへ入社。SNSを中心とした広告運用に携わり、ゲームアプリから学習塾まで幅広い業種のクライアントを担当。2022年1月より、オプトでデジタルマーケターに従事する傍ら、ウェディング事業のDXプロダクトの開発・販売を行う株式会社アッカーマンを創業。経営者兼現役デジタルマーケターとして、起業家・社会人それぞれのシナジーを生み出すワークスタイルを追求する。日本で10名のみのLINEマーケティングサービスの認定講師「LINE Frontliner」資格を保持。


山﨑博司さん 株式会社博報堂 クリエイティブディレクター/コピーライター
岐阜県生まれ。大学、大学院で建築設計を学んだ後、2010年博報堂入社。TBWA\HAKUHODO出向を経て現部署。「言葉の力で、社会を動かす」をモットーに、コピーを軸にした統合キャンペーンや社会課題解決業務を手掛ける。受賞歴に、2021クリエイター・オブ・ザ・イヤー、TCC賞、TCC最高新人賞、ACCグランプリなど。著書に「答えのない道徳の問題どう解く?」1巻/2巻。