RESEARCH業界・職種を学ぶ 就活・自分を知る

レポート

電通・博報堂などのクリエイター集結! 実践型5daysワークショップ「Creative Summer Camp」〈イベントレポート〉

マスナビ×コピーライター養成講座

電通・博報堂などのクリエイター集結! 実践型5daysワークショップ「Creative Summer Camp」〈イベントレポート〉

2023年8月30日から9月5日までの間、5日間にわたるワークショップ「Creative Summer Camp」が開催されました。株式会社宣伝会議が主催する「コピーライター養成講座」とのコラボレーション企画で、コピーライター養成講座などにて講師を務めるクリエイターを招いた講義を実施しました。初日は電通の阿部広太郎さん、2日目は博報堂の小島翔太さん、3日目はCHOCOLATEの市川晴華さん、4日目は電通の多々良樹さんと豪華布陣による講義。自身の経歴・手がけた案件や企画の考え方など、広告クリエイターとしての土台をお話しいただきました。 参加学生は講義の内容をヒントにひとつの課題に対してチームで企画を考え、最終日にプレゼンテーションを行いました。

本レポートでは、4名の講師による講義の内容を一部抜粋。参加学生のみなさんが取り組んだプレゼンテーションの様子も含めてお届けします。

Day1 電通 コピーライター 阿部広太郎さん講義

1

初日は阿部広太郎さんの講義からスタート。企画を「A→B」と表現し、企画を考えるにあたって自分自身の原体験こそが原動力になると冒頭で話がありました。そこで阿部さんの原体験について触れる一幕も。「中学時代、部活に入りそびれてしまった。放課後は居場所がなくて、ダッシュで家に帰るような日々を送っていた。卒業アルバムを意識する時期になって、自分が写っている写真がほとんどなくて、その時初めてだれかの思い出の中にいたいと強く思った」という経験から自分を変えたいと思い、アメリカンフットボールを始めたこと。アメリカンフットボールを通じて自分の内面も変化し、自分に居場所ができたと感じたこと。これらの経験を踏まえ、だれかとつながる瞬間や一体感をつくる仕事がしたいと思い、広告業界を志したと語られました。

その後は、電通に入社して人事局配属になってからクリエーティブ局に異動するまでの経験やクリエーティブ局に異動してからコピーライターとして実績を生み出すまでの苦悩についても赤裸々に教えてくれました。人事時代に携わったインターンシップで学生が熱心に課題に取り組む姿を見て、自分がしたかったことは企画やアイデアを考える仕事だったと気づき、転局試験に挑戦。「才能とは、かけた時間のことだ」と考えた阿部さん。試験で「10本以上コピーを書く」課題が出たとき、10本「以上」と上限が定まっていないことに着目。自分のやる気、熱量も見てくれるのではないかと考えて10本をはるかに上回る量のコピーを提出し、その結果転局を勝ち取ったエピソードを紹介してくれました。

次に、企画のノウハウについても解説。「言葉の企画」と題し、コピーの考え方のフレーム「そもそも・たとえば・つまり」を実例とともに説明いただきました。「そもそもそれは何なのか?」と疑問を持ち、それをもとに「たとえばこのような経験があった」、「つまりこのような本質がある」と考えを進めていく方法です。経験から本質を見つけ、それをコピーにする。そのためには自分の経験が大切になるので、これまでの経験をとにかく思い出すことが重要だと語られました。

参加学生からは、「ものの捉え方のプロセスが明確になった」「クリエイティブ職はキラキラしていて、才能のある人が就く職だと思っていた。しかし、キラキラした成功の裏で地道な努力をしていることがわかり、さまざまな挫折や苦労があったからこそ、見る人の心に響く広告をつくることができるのだと感じた」などと感想が寄せられました。

その後、5日間を通して取り組む課題の発表がありました。課題は「紙もの斜陽時代を覆すアイデア」。電子書籍の浸透により紙の書籍の売り上げが低下しているなかで、現状を突き抜けるアイデアを考えることが求められました。参加学生は5~6人のチームに分かれ、課題に取り組みはじめました。

Day2 博報堂 クリエイティブディレクター 小島翔太さん講義

1

2日目は小島翔太さんの講義。企画とは「誰が 誰に いつ どこで どうなってほしいか」を考えるものだと捉える小島さん。企画の良し悪しは「誰が」と「誰に」によって大きく変わるので、調べて想像して考えることが大事だと冒頭でレクチャーしていただきました。そして小島さんが手掛けた大塚製薬「カロリーメイト」のテレビCM・WebCMをベースに、どのように企画を考えて実現させたのか解説いただきました。たとえば2022年夏の部活をテーマにしたWebCMは、高校生活のすべてをコロナ禍で過ごした高校3年生がターゲット。学生の生の声を聞くため高校生50人にインタビューをし、「みんな同じだししょうがないけど、しょうがなくない」という本音を肯定するような内容を意識して制作したと解説いただきました。

「もともとカロリーメイトのCMが好きだった」という参加者も多く、講義内でCMが流れた際には思わず涙する学生も。参加者からは「私自身、高校3年生のとき新型コロナウイルスが流行し、中学高校と続けてきた部活の引退試合がなくなりあっけなく引退してしまったのでとても共感できた」といった声も挙がり、実際のターゲットに響いている様子が見受けられました。

企画において大切なことは「新しい、見たことがない組み合わせを考える」ことだと力説します。ジェームス・W・ヤングの言葉を引用し、「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」「新しい組み合わせを生み出すためには事物の関連性を見つけ出そうとする心の動きが大切」と語られました。

また、小島さんは広告について「見られないもの、無視されて当然のもの」だと強調。企業の言いたいことと、ターゲットが「聞いてあげてもいいこと」がぎりぎり交わるポイントを探すと、世の中と企業が結ばれてターゲットに届く良い広告になると教えてくれました。

そして最後に学生のみなさんへ、「今話題になっているもの、人生で触れるすべてのことが企画の引き出しになるので、面白かったものを人に説明する、おすすめするくせをつけるとよい」とアドバイスがありました。


Day3 CHOCOLATE プランナー/クリエイティブディレクター 市川晴華さん講義

1

3日目は市川晴華さんにお越しいただきました。市川さんはデザインを学ぶために美大に入ったものの、周りと比べてデザインのセンスがないのではないかと悩んだそう。先生から「プランナーになるかデザイナーになるか選びなさい」と言われ、企画するほうが好きかもしれないと思ったことがきっかけで、プランナーを目指すようになったそうです。

また、広告業界のクリエイティブはアイデア勝負なので、会社規模に依存しないことをお話しいただきました。市川さんご自身も、小規模な広告会社からキャリアをスタートさせ、2年後に読売広告社へ転職。そして現在はCHOCOLATEにて活躍しながら、読売広告社のパートナースタッフも兼任しています。ご自身の経験をもとに、「広告業界にたどり着けさえすれば、続く道は無限にある」とメッセージをいただきました。

企画については5つの切り口をご紹介。「〇〇なのに××」という意外性やギャップをつくること。商品が持つ、新たな切り口を発見すること。商品の本来の価値を発見すること。そしてストーリーの意外な展開で惹きをつくること。最後にリアルな事件をつくること。いずれも受け手が良い衝撃を受けるかどうか、その度合いが重要だと市川さんは捉えています。

参加学生からは「小さな広告会社出身でも、今このように第一線で活躍されている姿を目の前で見ることができ、広告には無限の可能性があるのだと実感した」「意図せず結果的にクスッと笑えるCMが出来上がる裏側や思考が勉強になった」などと感想が寄せられました。


Day4 電通 コピーライター・プランナー 多々良樹さん講義

1

4日目は多々良樹さんの講義。「あらゆる課題は、人間が作り出すもの。だからこそ、すべての課題はコミュニケーションによって解決できる」と考えている多々良さん。企画の考え方について理論的に説明してくれました。

はじめに「アイデアとは、前提を覆すもの」と話します。最終日のプレゼン課題「紙もの斜陽時代を覆すアイデア」に沿い、本の「前提=普通」とそれが覆された状態を複数提示(例:本の普通は表紙を見て買うこと→前提を覆すと表紙のない本を売ること)。

アイデアの候補を出すのは簡単だが、そのアイデアで課題を解決できるのかどうかが重要。前提を覆しながら課題を解決する発想が求められていると語られます。そしてアイデアを戦略アイデア・構造アイデア・表現アイデアに分け、それぞれのアイデアについて多々良さんの手がけた作品をもとに考え方を解説いただきました。

そして、講義の最後に実施された
「事例シャワー」で参加者の満足度も最高潮に。過去の広告賞受賞作品を20作品ほど流し、作品のアイデアについて10点満点で点数をつけ、自分が感じたことを書いていきます。「実際に作品を評価することで、アイデアの考え方の型を学ぶことができた」と参加者からは感想が寄せられました。

Day5 プレゼンテーション

1

4日間の講義・プレゼンテーション準備期間を経て、最終日は参加学生全10チームによるプレゼンテーションと講評を行いました。

講評ではそれぞれのチームについて講師からコメントがあったのちに、4人の講師から個人賞が贈られました。【多々良樹賞】は物語の続きを書かせることで紙の本ならではの良さを伝える「つなぎつづる物語」を企画したチーム。【市川晴華賞】は紙の本ならではの思い出を呼び起こす「思い出本のレストラン」を企画したチーム。【小島翔太賞】はヴィレッジヴァンガードとのコラボで名のない本を自動販売機で売るアイデアを考えたチーム。【阿部広太郎賞】は手紙と本をかけ合わせた「メッセージブック」。それぞれの受賞ポイントやフィードバックがありました。



1
左上:多々良樹賞 右上:市川晴華賞 左下:小島翔太賞 右下:阿部広太郎賞

多々良さん:ほかのチームと切り口が被っていない点が良かったです。また、「答え合わせをしたい」というモチベーションのつくり方も評価ポイントでした。ただ、参加するハードルの高さが惜しいです。着眼点は良いので、たとえばお笑い芸人に続きを書いてもらい、お笑い芸人のファンに興味を持ってもらうなど、このアイデアをもとにさまざまな企画に広げられるのではないかと思います。

市川さん:ターゲットを「昔紙で本を読んでいた人」に絞っている点を評価しました。たしかにその人たちならもう一度紙の本に戻ってきてもらえそう。無理なくターゲットを動かせそうだと感じます。また、本の本質的な価値に一番着目できていたグループでした。紙の本ならではの良さをCM企画のなかでさまざまな角度から表現されていて良かったです。

小島さん:自販機から本が出てきたらおもしろいし、タイトルがない本があったら気になる。こういった企画をヴィレヴァンがやっていたらおもしろいだろうと思えました。世の中に出して実際に企画が動く様子をイメージできましたね。企画はとても良いので、本を読まない人が手に取るところまでの動線が設計されていたら、もっと良くなるはず。

阿部さん:こうしたプレゼンは机上の空論になってしまうことが多いのですが、自分がワクワクするアイデアは試しにやってみたくなりますよね。プレゼンターのみなさんの「つくってみました」という行動は本当に大事ですし、見ている側も心が動かされます。実際にメッセージブックを配ってもらって、受け取ったからこそ紙の本を読むことの良さやメッセージとして贈り手の思いが伝わりました。この企画を思いつけたことを大事にして、もしできれば実際に企画として実行してみてほしいですね。


最後に最優秀チームの発表。最優秀賞を獲得したのは浦田晃河さん(東京大学)、北薗萌子さん(慶應義塾大学)、正源紗夕さん(日本大学)、中村彩乃さん(上智大学)、前田直哉さん(和光大学)のチーム。

20~40代の男性が書店の利用率が低いことをデータで示しターゲットとして設定。さまざまなデータから「男性はカッコよく見られたい」「読書をしている姿はカッコいい」「多くの社会人は読書をしたいと思っている」ことを怒涛のようにロジックでアピールし、「電子派か、紙派か。モテそうだから紙にした。」というキャッチコピーを作成し、交通広告やSNS広告のデザインを提案しました。


1
優勝チームの発表スライド

阿部さん:紙の本を読むことにどのように光を当てるかを考え抜いた結果、一気通貫して「本を読むことはかっこいい」というメッセージでやりきったところがよかったです。僕自身の経験なのですが、親友のCMプランナーがいつも文庫本を読んでいて、かっこいいなと思っていました。みんなが「たしかに」と思えるのではないかと思います。着眼点がよかったですね。

多々良さん:広告の力は限定的で、広告を打てば良いというわけではありません。でも「本を読んでいる人ってカッコいい」というメッセージはスッと腹落ちします。車のCMを制作するにあたっても、実は機能面の訴求よりも、購入する人が「自分の車はカッコいい」と思えるようにするのが大事だという話を聞きます。

最優秀チームの5人には阿部広太郎さんの著書『心をつかむ超言葉術』、クリエイターを目指す学生のための就活本『クリ活2』、マスナビで連載中の新人コピーライター成長物語『ゾワワの神様』が贈呈されました。


1



1

5日間の全プログラムが終了後も、各講師のもとに駆け寄り企画のアドバイスをもらったり、就職活動について相談したりする姿が多数。最後まで大盛況でイベントは幕を閉じました。

参加学生の感想

全体を通じ、参加者からは下記のような感想が寄せられました。講義や課題への取り組みを通じ、さまざまな知見が得られたようです。


「講師の方のお話を聞き、課題に取り組む中で、プランナーになりたいという新たな夢ができました」
「難しいお題に対してクリエイティブの力でチームで解決したいという思いが強まりました」
「実際に携わっている方たちが、どのような思い、どのような考え方で広告に携わっているのかが知ることができたのが、非常に良かったです」
「周りの人を喜ばせたい、と思って、その気持ちに沿って発想するということがクリエイティブなんだよ、そんなにかしこまった特別なものじゃないんだよ、と教えられたように感じます」
「メンバーとのアイデアの出し合いにおいて、他の考え方に触れ合う中で自分の中でまた視野が広がったり、ハッとしたりする貴重な経験ができました」

マスナビでは、今後も広告・クリエイティブ業界を目指すみなさまに向けてさまざまなイベントやコンテンツをお届けしていきます。