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レポート

自分の価値が伝わる「自分キャッチコピー」のつくりかた

博報堂 コピーライター 三嶋浩子さん

自分の価値が伝わる「自分キャッチコピー」のつくりかた

2024年5月現在、大学3年生等(2026卒)はインターンシップへの参加を検討している人も多いはず。就活の入り口に立った人が一様に悩むのが「自己分析」。自分の何が企業への売りになるのかイメージできず、不安に翻弄される人は多いです。「自己分析」したものを「自分の価値化」につなげる。自分の価値を言葉にして、面接やエントリーシートで表現する。これは内定を得るため、とても重要なことです。

そこで、コピーライターでキャリアコンサルタントの有資格者の博報堂・三嶋浩子さんが生み出した独自メソッド「自分キャッチコピー」に基づいて「自らの価値をどう伝えるか/伝わるか」について語ってくれました。

※本稿は、三嶋(原)浩子『就活・受験に効く!自分キャッチコピー~博報堂コピーライター直伝36のツボ』(中央経済社)の一部を転載・再編集したものです。

面接で「私は何者」かをうまく伝えられないのはなぜか

●「売り物がしっかりしている」が大切なのは、芸能人も一般人も同じ
芸能記者の中西正男さんは「芸能人は売り物がしっかりしていることが大切」と、よくラジオ番組で話をされています。例えば、なかやまきんに君は「筋肉」。分かりやすいですね。ギャグは「パワー!」ですし。『なぜ、この芸人は売れ続けるのか?』という著書をヒットさせた中西さんが断言しているから間違いない。売れる芸能人は「売り物がしっかりしている」。異論ありません。

同時にそれは一般人も同じ。とくに就活の面接では「この人の売りは何だろう」「どんな風に我が社に貢献してくれるんだろう」、そういう目で面接官は受験者を見るわけです。しかも、初めて会って短い時間で判断しなければならない。売りがしっかりハッキリしていることは、面接においては最低限の必要事項と言えるでしょう。

●自分のことは、自分が一番分からない

大学生と話していると、自分の価値と強みは何か、当の本人が分かっていない学生が実に多い。いや、分かっていないというより、「それは大した価値ではない」と思い込んでいる。偉そうに言う筆者も分かっていません。自分より優れたコピーライターもCMプランナーも履いて捨てるほどいる。何が自分の価値なのか、端的に語るなんて、とてもとても。そんな筆者ですが、キャリアコンサルタントの資格取得給付金の申請で担当者が書いてくれた推薦文に「私にはそんな価値があるんだ! 全く気づかなかった!」と感涙しました。この文章のおかげで、キャリアコンサルタントの講座受講中、くじけそうな時に読み返して力をもらいました。

何が言いたいかというと、自分の価値を認識することで強くなれる、ということ。そのためのツールが「自分キャッチコピー」で、よりよく組み立てるには、第三者目線を入れることが重要です。

●「自分マーケティング」で自分を価値化してポジションニング
後ほどお伝えする「自分キャッチコピー」のつくり方では、第三者目線も取り込める仕組みがあります。自分のことは自分が一番分からないので「誰かに聞く」ことをシステム化しています。さらに、自分を商品と考えて、飛び込みたい就職先や業界というマーケットで、自分はどんな価値があるか、ライバルと差別化できるか、を考察する。このプロセスを筆者は「自分マーケティング」と名付けました。

自己プロデュースと意味は同じですが、「自分マーケティング」はライバルとの差別化がポイント。座れる席は1つ、と考えるのです。「売り」がハッキリすれば、自分が「何者」かもスムーズに伝えられるはずです。

「自分キャッチコピー」を就活で使えば効果絶大な理由

●面接の敵は「ダラダラしゃべり」
緊張しても、自分を良く見せよう、自分を分かってもらおうという気持ちはしっかり存在します。するとどうなるか。言葉数が増えたり早口になったりします。「緊張型ダラダラしゃべり」です。筆者は採用試験の一次面接官を務めた経験がありますが、そんな学生にたくさん出会いました。自分をアピールしたいがゆえに、言葉数が増えてダラダラしゃべりに陥る。せっかく実力があるのに、もったいないことです。

頭が良くて優秀な学生にありがちなのが、「丸暗記型ダラダラしゃべり」。面接対策を用意周到に行って、想定問答の答えを丸暗記して本番に臨む。「丸暗記型ダラダラしゃべり」、すぐ分かります。おー、よくこれだけ暗記してスラスラ話せるもんだ。頭いいんだな、受験秀才すごいな、とは思います。しかし「丸暗記型ダラダラしゃべり」は、心に届かない。この人の本質は何だろう、と考えさせてしまうんです。人柄が見えないんですね。

自分を実力以下に見せてしまう「ダラダラしゃべり」を防ぐ。これも「自分キャッチコピー」の役割です。自己PRを求められた時、「私のキャッチコピーは〇〇〇です」と話し始めれば、聞き手はその意味を聞きたくなる。ツカミはOKの状態にできる。聞き手の興味を獲得できれば、その後の緊張度は下がり、キャッチコピーに紐づく話がしやすくなります。

●志望動機・自己PR文の敵は「ダラダラ書き」
「自分キャッチコピー」の活躍場所は、面接だけではありません。履歴書や就活のエントリーシートでも活用できます。

エントリーシートの志望動機や自己PR文は300~500字で書くことを求められるようです。これが難しい。学生は苦戦しています。優秀な学生でも、つい「ダラダラ書き」をしてしまう。

「ダラダラ書き」は別の言い方をすると「一文が長い」ということです。「ダラダラ書き」に漏れなく付いてくるのが「無要約」。要約力のなさです。

「自分キャッチコピー」の課題制作でも、つい長いキャッチコピーをつくってしまう学生がいます。キャッチコピーが文章になっている。その場合、「文章ではなく文。一文にまとめましょう」とアドバイスします。そのプロセスで「要約力」が身に付いていきます。それも「自分キャッチコピー」の価値。1粒で2度おいしいわけです。

誰でも作れる自分キャッチコピー「制作方法4ステップ」

「自分キャッチコピー」のつくり方は、以下4つのステップを順番に踏んでいきます。

●Step0.ターゲットを意識する
広告制作の場合、ターゲットはさまざまに考えられますが、「自分キャッチコピー」の場合、ターゲットがはっきりと人事担当者・面接官と決まっているので、Step0になります。

●Step1.自分の長所・特徴を棚卸しする
「自分キャッチコピー」のつくり方における「棚卸し」とは、大学生活を中心に、生きてきた今までを振り返り、出来事や自分の長所・特徴を振り返ることです。

●Step2.コピーのジャンルを選ぶ
コピーの方針を以下4つのジャンルから選ぶのです。
・ジャンルA.特徴ドレスアップ ・ジャンルB.ポリシー宣言
・ジャンルC.自分ジャンル化  ・ジャンルD.自虐的

ジャンルを選ぶことで、コピーの語り口も決まってきます。ジャンルを設定しておくことで、Step4の「コピーに仕上げる」において、スタンスに沿って考えることで、思考の蛇行を防ぎ、合理的にコピーを仕上げることが出来ます。

●Step3.棚卸しした長所・特徴のどれをコピーにするか考える
これは単純に自分で自信がある事柄を選べばよいのですが、できれば志望する企業・業界に紐づいていそうな事柄をキャッチコピーにするのが良いです。例えば接客業を目指すなら「長所=気が利くと言われる」を選ぶ、といった具合にです。

ここで、勘違いしてはいけないのが、「自信」と「自慢」は異なる、ということ。自信のある事柄と、自慢したい事柄はその本質が違います。自慢は「私のこんなところを見て見て」というひとりよがり。そこにターゲットである人事担当者の立場に立った、というスタンスは見あたりません。

●Step4.選んだ長所・特徴を端的な一文(コピー)に仕上げる
文章に苦手意識がある人は悩みこんでしまうかもしれません。でも大丈夫。勝負どころはStep1の棚卸しとStep3の事柄選びです。ここさえ決まれば、短い言葉にすればOK。自分が覚えやすいかどうかが基準です。

……書籍では「4ステップ制作方法」の詳しい解説と使い方、「自分マーケティングのためのマトリックス図」、「エントリーシートの文章に効く コピーライティング3カ条」「面接崩壊を防ぐためのキャッチコピー記憶法」などもお話ししています。

三嶋(原)浩子さん

博報堂関西支社 シニアディレクター/CMプラナー/コピーライター
博報堂シニアビジネスフォース メディア・ディレクター/国家資格キャリアコンサルタント
同志社女子大学 日本語日本文学科「コピーライティング」非常勤講師
京都精華大学 メディア表現学部 「広告メディア論」「マーケティング」「ブランディング」非常勤講師
日本マーケティング協会認定 マーケティング・マスター

広告クリエイター・大学講師・シニア研究・地方創生の四刀流で活動中。ACジャパン「忘災が怖いんや」、企業連合広告「キングジョー、神戸に再び」など社会派広告を多数制作。
単著『未定年図鑑~定年までの生き方コレクション~』、共著『20代の武器になる 生き抜く!マーケティング』(ともに中央経済社) ABCラジオPodcast『未定年図鑑』出演中。



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三嶋浩子さんが登壇するセミナーを開催!

博報堂のコピーライター/キャリアコンサルタントの三嶋(原)浩子さんをお招きし、著書『就活・受験に効く「自分キャッチコピー」』(中央経済社)に基づいたセミナーを2024年6月13日(木)に実施します。

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