RESEARCH業界・職種を学ぶ 就活・自分を知る

レポート

放送収入の減少が続くテレビ局の今後の収益の柱は?〈決算レポート〉

マスナビ編集部

民放キー局5局の2024年3月期(2023年4月~2024年3月)の連結決算が6月に出揃った。各社テレビ広告収入が減少していく一方で、デジタル広告収入が増加している結果となった。それぞれの決算状況の概要は以下の通り。

フジ・メディア・ホールディングス

連結売上高は前期比5.8%増の5664億円、営業利益も前期比6.7%増の335億円と増収増益となった。

放送・メディア事業のタイム、スポットなどのテレビ放送による広告収入は、減収となった。
一方で、配信広告では、ドラマを中心にアーカイブ作品の戦略的な活用もあり、ユーザーが増加。通年で多岐にわたる業種や規模の広告主からのニーズが高まり、出稿が拡大した。年間、年度ともに2年連続AVOD(Advertising Video On Demand 再生数、ユニークブラウザ数、視聴時間)三冠となり、前期比61.6%増の78.6億円と大きく成長した。

デジタル事業では、FOD有料会員数が2022年11月に100万人を突破以降も、増加基調である。地上波やTVerとの連動も奏功し、売上高は前期比17.5%増の150.8億円となった。

今後も配信関連ビジネスの拡大や、ライツ、MDビジネス(マーチャンダイジング/
イベント関連の物販や人気アニメの関連グッズ)、イベント等コンテンツ事業の展開を進め、最終的には2025年度に連結営業利益400億円を目指すとしている。

日本テレビホールディングス

連結売上高は前期比2.3%増の4235億円、連結営業利益は前期比10.1%減の418億円となった。

スポット広告のシェアは関東エリアで3割超となっているが、テレビ広告は厳しい市況がつづいており、地上波テレビ広告収入が減少。一方でデジタル広告収入は、民放公式テレビポータル「TVer」等による動画広告の伸長により前期比33.3%増の68億6000万円であった。

今後は、地上波テレビ広告収入の在京キー局トップを継続しながら、媒体力を明確に示すためのデータ活用や、クライアントのニーズに即したセールス改革を通じて、テレビ広告の価値向上に努める。Huluによるコンテンツ販売収入と、TVerによるデジタル広告収入の伸長を継続する。豊富なコンテンツと映画・イベントなどの事業を有機的に連動させることによって、収入の拡大に努める。

TBSホールディングス

連結売上高は、過去最高の3943億円と前期比7.1%増であったものの、連結営業利益は、メディア・コンテンツ事業での放送収入減少と番組制作費増加の影響で、前期比27.0%減の151億円であった。

メディア・コンテンツ事業では、スポット収入が減収となったものの、配信広告収入や有料配信収入の大幅な伸長に加え、映画が大ヒットし、前期比0.9%増の2878億5400億円となった。TBSテレビの配信広告収入は国内の無料動画配信が引き続き好調で、前期比45.4%増の82億4300万円となったことに加え、国内及び海外有料配信収入は前期比36.5%の121億4600万円と大幅に伸長し、テレビ部門全体の増収を牽引した。

2024年度の連結業績は、放送収入は前年と同水準としつつも、成長分野である配信などの拡大や、各グループ企業の成長を見込み、売上高、営業利益ともに増加すると予想している。今後は、デジタル・海外・ライブエンタテインメント・ライフスタイル領域の成長を促進させる施策を実行していく。

テレビ朝日ホールディングス

連結売上高は、前期比1.1%増の3078億円であったが、営業利益は、前期比14.9%減の123億円となった。

TVerなどのデジタル広告関連収入は、前期比29.7%で58億円となると同時に、TVerの見逃し配信再生回数も、前期比126%増となっている。インターネット事業全体としては、前期比13%増の287億円を記録した。サイバーエージェントとの共同事業『ABEMA』では、ABEMA NEWS、MLBやEURO等が人気となり、地上波スポーツ中継の連携強化を行った。WAU(Weekly Active Users:1週間のアクティブユーザー数)は2300万人前後で、引き続き好調に推移すると同時に、大幅な収益改善につながり、黒字化へ前進している。

今後2025年度までに、年間・年度での個人全体視聴率三冠達成を目指すとともに、売上高3300億円、営業利益200億円を目標としている。

テレビ東京ホールディングス

連結売上高は、前期比1.6%減の1485億円となり、連結営業利益は前年比4.3%減の88億円となったものの、歴代で2番目の水準であった。

ライツ事業が放送事業の落ち込みを下支えする形となった。放送事業では、タイム収入は、特番が好調で減少を小幅に収めたものの、スポット収入は、市況悪化に加え、東京地区でのシェアが低下。結果として、放送事業利益は、前期比4.5%の164億円に成長にとどまった。

ライツ事業の主軸はアニメ部門。『SPY×FAMILY』の配信や、ポケットモンスターの商品化、欧州で『NARUTO』の配信、『ブラッククローバー』のゲーム化権が世界的に好調。国内外で成長を持続しており、事業利益は前期比11.5%増の156億円となった。

今後は、アニメ・経済報道・独自IP事業の強化によりさらなる成長を目指していく。

キー局(単体)の放送・配信・事業収入



※各社の決算資料をもとに一部項目を抽出し、マスナビ編集部にて編集しています
※テレビ東京は配信広告収入の詳細がないため、グラフには入れていません
※事業収入はイベント・アニメ・IP・海外・配信等の収入をまとめたものです

どの企業も放送事業にとどまらず、配信事業やデジタル事業、コンテンツ事業、IPビジネスにシフトしていく動きを見せている。決算資料や有価証券報告書、統合レポートを詳しく見てみると、企業が過去・現在・未来を掴むきっかけとなることが多い。ぜひ企業研究の一つの方法として取り入れてみてほしい。