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レポート

電通の人事担当者に聞く広告業界で求められるスキル・マインド

マスナビ編集部

電通の人事担当者に聞く広告業界で求められるスキル・マインド

コミュニケーションを軸にさまざまな領域に拡大を続けるdentsu Japanの成長を支え、dentsu Japan 各社の人財の採用・育成業務を担う株式会社電通コーポレートワン。同社において株式会社電通(以下、「電通」)の人事を担当する松澤美穂さん、小林洋子さんが「人財の見える化」プロジェクトを牽引している。

同プロジェクトでは電通社員が習得するべきスキルを定義している。求められるベーシックなスキルとマインドを知ることで、読者自身がマッチしているかを確認することができる。電通ビジネスコアスキルと事業領域別専門スキルについて詳しく聞いてきた。(以下、『広告界就職ガイド2026』(宣伝会議)より一部を転載)

「人財の見える化」プロジェクトとは

電通における「人財の見える化」プロジェクトは2016年の労働環境改革に端を発している。それまでのOJT依存から脱却し、社員一人ひとりが学びの必要性を自覚し自律的に成長し続ける仕組みづくりの実現を目指してスタート。同社の持続的な成長に貢献するために、社員の成長に向き合う風土の醸成及びマネジメント体制の強化を推進してきた。


さらに急速な社会・ビジネス環境の変化を受け、企業として新たな事業を生み出すためにも事業変革の必要性が高まっている。電通においても、すべてのビジネスの起点であり最重要資本である「人財」の成長に改めて焦点を当て、データを基に人財の成長を可視化するプロジェクトが始まった。

「社員の状態」の可視化から得られた課題

まず、2020年頃から社員の状態を把握し、持続的な「成長」を可視化していくための枠組みを作成した。パフォーマンス・評価を縦軸に、自己成長意欲を横軸にして社員を9つに分類。属性、経験、資質・価値観、労働データ、組織へのエンゲージメントなどのデータを試行錯誤しながら掛け合わせて、それぞれの層ごとの特徴や課題を抽出し、それぞれに適した打ち手を実施している。


例えば、「パフォーマンスは高いが目標設定ができていない層」には、自分の経験やキャリア資産を棚卸しし、ありたい姿とアクションプランを描くプログラム「未来構想キャンプ」への参加を促進した。3日間を費やして、一人ひとりが自身と深く向き合い、未来の姿とそこに至る道筋を描いてもらう場を提供。「自分の目指したい姿が描けた」「学びたいことが見つかった」との声も多くあがるようになり、中長期的なスパンで自律的にキャリアを考えられる社員を増やすことにつながっている。

求められるスキル

さらにスキルの可視化を進め、全社共通の電通ビジネスコアスキル13項目と、事業領域別専門スキル計145項目を策定。1年に2回の入力タイミングを設け、全社員が保有するスキルとスキルレベルを取得している(※2024年3月時点)。


電通における全事業領域のスキル項目

※ 2024 年3 月時点


電通ビジネスコアスキルは、電通社員として働くうえでどの部署においても最低限必要なスキルを指す。これを土台に、“ビジネスプロデュース”“マーケティング”“デジタル”“クリエイティブ”“メディア・コンテンツ”“グローバル”それぞれの事業領域での担当業務遂行に必要な専門スキルを整理した。スキルは5段階で、本人と上長が入力する。全社員のスキルレベルを取得・分析した結果、電通ビジネスコアスキルでレベル4(顧客満足レベル)以上のスキルを持っている人が専門スキルも高いことが判明。専門スキルのレベルを上げるためには、コアスキルが不可欠であるという仮説を立てた。


スキルデータをより精緻にしていくためにも、社員のスキルの捉え方やレベル感を揃えることにも尽力。ビジネスコアスキルは“コンセプチュアルスキル”“ヒューマンスキル”“エグゼキューションスキル”の3つに分類し、たとえば“コンセプチュアルスキル”には思考力やビジョニング力、“ヒューマンスキル”にはコミュニケーション力やネゴシエーション力、“エグゼキューションスキル”にはネットワーク力やプロジェクトマネジメント力などが含まれる。


電通ビジネスコアスキルの精緻化への取り組み


また、ビジネスコアスキルをそれぞれ行動ベースで内容を解説する「スキルディクショナリー」を開発。たとえばコミュニケーション力とは、「相手の思いを考えたうえで自己を表現し、意思の疎通を通じてステークホルダーと信頼関係を構築する力」という主旨の説明がなされている。「コミュニケーションは一方的に伝えることではなく、相手ありきの行為。相手の状況や想いを理解したうえで、自分をどう表現するかが大事」と松澤さんは語る。


スキルディクショナリー一例


「新卒採用時には、コアコンピテンシーと呼ばれる、本質的な行動特性(物事に対してどう取り組む人物なのか)を評価対象としている。コアコンピテンシーは上述のビジネスコアスキルと厳密には完全一致しているわけではない」と小林さんは注釈をいれる。なぜならビジネスコアスキルは仕事をしていくことで磨かれるスキルだと考えているからだ。

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