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レポート

大学生が「人間らしさ」を考えるブランドコンテスト決勝潜入! 乃木坂46メンバーも実像・偶像の狭間に人間らしさを見つけたプレゼン実施〈イベントレポート〉

BranCo! ×マスナビ編集部

大学生が「人間らしさ」を考えるブランドコンテスト決勝潜入! 乃木坂46メンバーも実像・偶像の狭間に人間らしさを見つけたプレゼン実施〈イベントレポート〉

2024年12月21日(土)に、東京大学駒場キャンパスで第13回BranCo!の決勝大会が行われました。「BranCo!」は、博報堂と東京大学教養学部教養教育高度化機構が共催する大学生のためのブランドデザインコンテストです。3~6人のメンバーが協力して、課題となるテーマについてさまざまな視点から調べ、その本質を考え抜き、魅力的な商品やサービスブランドのアイデアを生み出してチーム対抗形式で競い合います。今年は地方学生の参加も多く、かつてないほどの広がりを見せた大会となり、全国82校125チームで計506人が参加しました。



決勝大会に進めるのは、二次審査に参加した36チームの中から、たったの6チーム。それぞれのチームが工夫をこらし、知恵を絞り、つくりあげてきた「人間らしさ」がぶつかり合う熱い戦いとなりました。本レポートにてその一部をお届けします!

125チームから勝ち上がった6チームによる決勝大会

1チーム目のまさまさチルドレンは、「人間らしさ」には、感情の発散・抑制が大切だと思ったそうです。しかし現代社会では、自分のありのままの感情の適切な伝え方を思案することがストレスとなる「感情疲れ」という問題があると気づきました。


この問題を解決するために、「感情エフェクター」のアイデアが生まれました。自分のありのままの感情を「感情エフェクター」というアプリケーションを通すことで、適切な表現が出力されます。例えば、「上司と砕けて話すモード」や「怒りを伝えつつ角を立てないモード」などを、感情エフェクターのおかげで、自分のありのままの感情を悩まずに表現できます。


感情疲れから解放されるサービスを提供し、人間が人間らしくあることを尊重できる社会を実現したいと締めくくりました。



2チーム目は煩悩シスターズ。人間らしさとは「誰かの思い出に残ること」と捉えました。思い出に残るのは「個性を含めたストーリーがあるから」と行き着きました。発表者の一人が実は寺息子で、コロナ禍により葬式が一般葬から家族葬に変化し、故人の思い出を語らう機会がなくなり、印象に残らないものになったことを残念に思ったそうです。「大切な人に囲まれて死にたい」と思う人が多いはずなのに、現代の葬式は人間らしくないのではないかと感じたそうです。


そこで、葬儀×ギャラリー「Memorium」を考えました。本葬とは別に、故人の思い出の品をエピソードとともに展示することができるサービスです。生き様は自由に決められるようになったけれど、死に様は自由には決められない。しかし、人間の存在は思い出にかたどられるからこそ、故人の思い出を語り継いでいけるサービスをつくりたいと思いから生まれました。


亡くなる人は増えていくにもかかわらず、「葬式をやるのは面倒」という感情が顕在化し、死も合理的・経済的に片付けられるようになってしまった現代。果たしてこの社会は正しいのか、死に対する関わり方はこれで良いのか。問題提起しつつ、「その人の生き様は死に様にあらわれる。死に対する関わり方をもう一度見直すべき」と考えたチームでした。

3チーム目はあんかけスパゲティ。人間らしさとは「追憶を楽しむこと」と考え、ホームビデオで幼少期特有の声・単語・話し方を後から再生して楽しむことを例に挙げました。さらに、視覚情報をなくして、音声情報に特化すると、より深く追憶できると提言しました。


そこで、「声を形に残す」をもっとカジュアルにしたいと考え、愛しい我が子の声を記録として残す「RECOCO」というサービスを考えました。「RECOCO」は食卓に設置する成長のレコーディングカレンダー。家族団らんの場である食卓の声をレコーディングする機能がついており、そこで出てくる子どものいい間違えや仰天発言を「文字」で残せるもの。子どもとの会話を記録することを習慣にし、追憶できるようにしたいという想いが込められているそうです。子どもの刹那的な「声」を残すことができるプロダクトに価値があると考えたチームでした。



4チーム目は(hanamaru)。「区切りをつける」「書き換える」行動に人間らしさがあるのではないかと考えたそうです。そして、「人間らしさ=自分書き換え欲求」と定義しました。


ギターがうまくなりたい。筋トレをして引き締まった身体になりたい。新たな自分に書き換えようとする衝動はあるが、つづけられず諦めてしまうことが多いと事例を交えて紹介。それを解決するために考えたのが日めくりカレンダー「めくりめく」です。1日を1枚で区切って、自分を書き換えるためのステップが記されています。自分のペースでいつでも「途切れ・再開」できるものです。自分を書き換えたい、と感じたときに「見るのは一歩先。道のりは途切れ途切れでOK」と肯定してくれる商品となっています。


「人間らしさ」を考える中で、人間のだめな部分を見ることが多かったそうですが、そのだめな部分を受け入れて肯定したい。そのうえで、人間らしさである自分書き換え欲求を達成できるような商品を提案したチームでした。

5チーム目はスクイン。人間らしさとは、感情があって生命力や活気に溢れ、完璧ではないことと考えました。ただ、社会はそんな人間らしさを抑圧するのではないかと思ったそうです。そして、人間らしさの原点は赤ちゃんではないか、という考えに行き着きました。


赤ちゃんのようにありのままの人間らしさを出せるようにしたい、と考え、電車という小さな社会でありのままを出せるサービスを考えました。その名も「しゃべレール」です。「しゃべレール」は、名前の通り電車内で気兼ねなくお話しできる車両のこと。乗車すると「誰と」利用したのかが記録として残り、後から見返せるようになっています。


コロナ禍により、行事はすべて中止に。人前で話すこともはばかられる経験があった中で、帰り道の何気ない会話で感じる小さな幸せを残せるものをつくりたい。そんな想いを形にしたチームでした。



6チーム目はずんだもち。「私という人間」への印象の調査を行い、人間らしさを深堀りしていったそうです。調査の結果、関係性が遠いほど相手に対し勝手なイメージをつくっていることがわかりました。また「人間」をオノマトペにする調査も実施。結果は、「ふわふわ/イガイガ」などのポジティブ/ネガティブな両面を示す回答が出てくることが多かったようです。身近な人を「ふわふわ」と捉えていたのに「イガイガ」な一面を見聞きして、勝手にラベリングして勝手に失望してしまうケースなどを紹介していました。


現代の人は何でも白黒はっきりさせる一方で、昔の人は自分の想像を超える部分を「妖怪に取り憑かれた」「狐に騙された」など曖昧なままにしていました。このような解釈の余地を残していたことを人間らしさと捉えました。勝手に決めつけ、勝手に落ち込む生きづらい世の中を変える、偏見が生まれない出会いの場「IMY YOU」を提案。肩書や外見を秘匿した対面型のサービスで、解釈の幅を広げ、私たちが人間らしく生きられる手助けになるような場を提供するものです。

乃木坂メンバーによる特別プレゼン

今回はスペシャルゲストとして乃木坂46の池田瑛紗さん・井上和さん・菅原咲月さん・中西アルノさんの4人が、「ノギンジャーズ」として登壇し、特別プレゼンテーションを披露しました!


まずは「アイドル」の観点から人間らしさを深堀り。「アイドルは人間らしいのか」「アイドルに人間らしさを感じるときは?」などメンバーやスタッフへのアンケートを通して、「ありのままの自分」と「取り繕った自分」を行き来することを人間らしさと定義しました。そして、さらに、アイドル自身も、「ありのままの自分」と「取り繕った自分」の切り替えやバランスに悩んでいることに気づいたそうです。


そこで、「ありのままの自分」も「取り繕った自分」も、どちらも認めて、自分を好きになれるようなブランドをつくりたいと考え、「NOGI診断」を提案しました。「NOGI診断」では、いくつかの質問に答えることで、「ありのままの自分」と「取り繕った自分」を知ることができ、自分のことを好きになれるサービスです。


「ありのままの姿も、取り繕っている姿も、私たちは、そんなあなたの『人間らしさ』を肯定して、愛しています」というメッセージで締めくくりました。



アスピレーション(内なる想い)が審査基準に

授賞式では、グランプリ、準グランプリ、オーディエンス賞と、計3つの賞が発表されました。


グランプリは葬式×ギャラリー「Memorium」を提案した「煩悩シスターズ」が獲得。トロフィー&賞状、ギフト券15万円分、博報堂おすすめ本セット、BranCo!オリジナルグッズが謹呈されました。


審査委員長の宮澤さん(博報堂 執行役員/東京大学教養学部特任教授)からは、「思い出がピークになるのは死ぬ前という話にも一貫性を感じました。何か死ぬ前に人間らしく生きたなと思って死ぬという行為そのものが良いなと、素直に思いました。孤独死など最後に人間らしくしていない人は結構多いなというのが実感としてある」とコメント。また「メンバーにお寺の息子が居ることで、学生としてなんとなく見聞きしたものではなく、自分ごと化された思いと社会を良くしたいという思いの2つの結節点が両方わかりやすく入ってきて、すごく良い企画でした」と講評いただきました。


また、審査員の真船さん(東京大学大学院総合文化研究科教授)から「コンセプトがセンセーショナルで、今後の新しい習慣になっていくかもしれないと思えるような企画でした」と今後に期待する声が上がりました。


準グランプリは偏見のない出会いの場「IMY YOU」を提案した「ずんだもち」が獲得。賞状、ギフト券5万円分、博報堂おすすめ本セット、BranCo!オリジナルグッズが謹呈されました。


審査員の竹内さん(博報堂 生活者発想技術研究所所長)からは、「オノマトペや妖怪の調査、そこから導き出した人間らしさに、納得性がありながら意外性のゆらぎもあり、面白い旅に連れて行かれたような気持ちで聞いていました。提案したサービスもビジュアル含めて良いと思いましたが、既存サービスとの差別化がもう少し欲しかったなと思いました」と講評いただきました。


オーディエンス賞は「しゃべレール」を提案した「スクイン」が獲得。賞状、博報堂おすすめ本セット、BranCo!オリジナルグッズが謹呈されました。


審査員の竹内さんからは、「(審査員の中には)電車中で話せないという感覚はあまりなかったものの、コロナ禍に高校生だった自分たちならではの想いが詰まっていると聞いた時、このサービスを本当に必要だと思う人がいるのかもしれない、というリアリティを感じることができました」と講評をいただきました。


また乃木坂メンバーへの囲み取材で、印象に残ったプレゼンは何かを聞いたところ、オーディエンス賞を獲得したスクインの「しゃべレール」が挙がりました。「私たちも全員、学生時代をコロナ禍で過ごした世代です。言葉にはしていないけれど、潜在的に思っていたポイントに気づけるのがすごいと思いながら、共感して聞いていました」と中西アルノさんはコメントしました。

型にはまらないコンテストで発想を広げてほしい

こうして第13回ブランドデザインコンテスト「BranCo!」は閉幕しました。本レポートを通じて当日の様子がうかがえたと思います。「オノマトペ調査」や「アイドルの人間性」など意外なアプローチの調査が多く実施されました。これらの独自調査を土台に、プレゼンターならではの視点でコンセプトが生み出され、最終的にユニークなアウトプットに結びつきました。


審査委員長の宮澤さんは「BranCo!は、どうやったら思考の枠を外したり、創造的になれるかというトレーニングの手法として生まれたもの」と語ります。


「型にはまらないBranCo!だからこそ、やり方にとらわれてほしくない」と宮澤さんは続けます。博報堂社員が決勝大会まで伴走しますが、あえて変わった調査を指南することもあるそう。他のマーケティングコンテストで型を理解し、BranCo!で型を破る。「両方わかって視野が広がります。もしかしたら人生がちょっと開ける可能性もあるかもしれない。BranCo!の自由度の高さは、大学生の時期に経験して決して無駄にはならない」と、宮澤さんから来年のBranCo!応募者へメッセージをいただきました。