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レポート
電通コピーライターが伝授する「面接で瞬時に言語化」ができるトレーニングとは?〈イベントレポート〉
マスナビ事務局

2024年6月、マスナビでは「言えないモヤモヤを解消する『瞬時に言語化する』面接対策セミナー」を開催しました。講師は、電通のコピーライター/クリエーティブ・ディレクターであり、累計15万部を突破した『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』(SBクリエイティブ)の著者でもある荒木俊哉さんです。キャリアコンサルタントの資格もお持ちの荒木さんに、今回は就活で自分の思いを伝える言葉がパッと出てこないなどの悩みに効く、日常に取り入れて「言語化力」を鍛えられる簡単トレーニングを教えていただきました。本レポートでは当日のイベントのダイジェストをお届けします。
言語化力とは何か
言語化できるようになるためには
突然ですが、あなたは今日起きてから今までの間で、感じたことや気づいたことを思い浮かべることはできますか? 難しいと感じた方が多いのではないかと思います。実は、日々感じていることは多いのに、自分でそれに気づいていないことが多いそうです。もう少し補足すると、「自分の中で言語にできていない」ということだと荒木さんは言います。人は生活していると無意識にさまざまな情報を受け取っていますが、そのすべてをキャッチして頭の中に記憶しておくのはまず無理です。情報過多でほとんどの人はそれをスルーする、つまり言葉になっていない状態で放置していたり、忘れてしまったりしますが、それをつづけていくと、自分の視点やモノの見方は増えていきません。反対に、この無意識に感じていることを、意識的に「言語化」していくことができれば、自身の意見や思いがわかるようになり、言語化力を成長させていくことができると荒木さんは語ります。
言語化力を身につけるうえでのメモ書きの有用性
荒木さんがおすすめする言語化力トレーニングは、A4用紙1枚のメモに書き出していくというシンプルな方法です。そのうえで、なぜメモ書きを活用するかについてもお話しいただきました。荒木さんは、メモは思考を言語化するためのツールとして優秀だと述べます。私たちがメモをするのは、一般的には記憶に残すためがほとんど。ただメモが効果的なのは、自分の思考を当てどなく書き連ね、無意識の言葉になっていない状態を強制的に言葉にせざるを得ない状況にするからです。自分の思いや意見の解像度を高めてくれるとも捉えられると荒木さんはつづけます。
あるテーマに対する自分の意見は、実は脳の中でほんの一部しか「言葉」になっていないとのこと。大部分は漠然としたイメージの状態です。このほんの一部の言葉をメモに書き出し、脳内から切り離して客観的に考えてみるそうです。そうすると、客観的にみた言葉がトリガーとなり、その言葉から連想される自分の中のイメージが自然と言語化される。繰り返し行うことによって、自分のさまざまな「思いや考え」が言語化されて脳内にストックしていくことができます。このストックがあることで、瞬時に言語化できる状態になっていくと荒木さんは伝えていました。
誰でも簡単にできる言語化力トレーニング
A4用紙に1つの「問い」を設定します。問いは何でも構いません。自分の趣味や取り組んでいることなど日常的なことから、キャリアに関わる問いまで。『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』の巻末には、荒木さんが考えた500の問いも掲載されているので、悩んだ方はぜひ参考にしてみてください。セミナーでは「自分が本当にやりたい仕事は何か」という例題を出していただきました。
設定した問いをA4用紙の一番上に書き、四角で囲みます。その下部に「思考」と「理由」に分けて書き連ねます。まずは問いに関して思い浮かんだ「思考」を一行書き、それを元に芋づる式に深堀りして考えていきます。最後に、「思考」の最後の行ででてきた内容を踏まえて、「理由」を書き出して完成です。制限時間は1枚2分、1日3枚書くことを推奨しています。これを365日つづけたら、1095の問いに対する「言語化」のストックができます。
「今日いきなりすぐに言語化できるようになるわけではない」と荒木さんはフォローします。伝え方は技術であり、言語化力は能力です。日々繰り返し鍛錬することで、伸ばしていくことができます。トレーニングの習慣化が一番の近道だそうです。
なかなか書き出すのが難しいという方向けに、メモ書きのコツも3つ伝授していただきました。
1つ目は問いに関係する過去の「経験」を思い出すこと。「経験」とは出来事と感じたことをセットで書くのが重要です。自分が体験した事実とそこから得られた自分なりの視点です。例えば、部活動である大会で優勝したとすると、決勝戦で勝ったことが出来事です。勝った瞬間にチームメイトと揉みくちゃになりながら「笑顔と泣き顔は似ている」と朧気に思ったとしたらそれが感じたことです。
2つ目は、経験したときの「感情」を思い出すこと。嬉しかったこと。怒ったこと。ムカついたこと。悔しかったこと。大きく感情が動いた瞬間に、どんな出来事があったのかを思い出します。1つ目の経験が思い起こせない方はそうやって振り返ることをおすすめしてくれました。
3つ目は、同じ「問い」を繰り返すと、言語化の解像度が増すこと。問いは毎日違うものを用意できなくても問題ありません。何度も繰り返すことで、より多くの思いや考えを言語化していくことができると教えていただきました。
また、メモ書きを活用した言語化力トレーニングは、今後のキャリアを考えるきっかけにもなるそうです。問いを用意して今までの経験を書き出すことで、自分を客観視するセルフキャリアカウンセリングにもつながるため、ぜひ就職活動でも活用してほしいという言葉で締めくくられました。言語化力とはなにか、どのように鍛えていくことができるのか、実践的にトレーニングを積むことができたセミナーでした。
書籍紹介
荒木俊哉著『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』(SBクリエイティブ)
累計15万部突破。「自分の思いや考えが言葉にできない」と悩んでいる方必見! A4用紙1枚とペンを用意するだけで取り組める言語化力トレーニングを行うことで、どんなときでも瞬時に言語化できる力を身につけられる一冊です。就職活動だけではなく、社会人になってからも役立つ力となるはずです。
自分の思いや言葉をうまく言葉にできない、就活生にとっての共通の悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。それは自分の思いや考えがないからではなく、ただ「言語化」ができていないだけです。荒木さんによると、そもそも「言語化力」とは「モヤモヤを言葉にする力」だといいます。ここで注意したいのは、言語化力は伝え方ではない、ということだそう。相手に伝えることを考えたときに、まず「伝え方」をなんとかしようとする人は多いと思いますし、世の中には伝え方を学ぶ本があふれています。しかしいくら伝え方だけを勉強して身につけても、言語化力は身につかないと、荒木さんは感じているそうです。
伝え方とは「どう言うか」であり、いくら伝え方を変えても中身はすべて同じ内容です。反対に言語化力は「何を言うか」だと荒木さんは捉えています。伝えたい内容をさまざまな角度から考えて見つける。コピーライターの仕事の9割も「何を言うか」が占めていると荒木さんは語ります。「何を言うか」はあなたの視点やモノの見方とも捉えることができます。つまり「自分が気づかなかった視点や見方をくれた」ことが評価されるのです。