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レポート
自信?過信?不信? 自分を冷静に分析して、モチベーションもコントロール ─ 就活を成功させるための心理テクニック 第3回
橋本之克さん
近年大注目の「行動経済学」。不合理な生き物である人間を、心理学と経済学を用いて分析する考え方で、マーケターが消費者インサイト(消費者自身が気づいていない本音や動機)を捉える際にも参考にするメソッドです。就職活動も人の不合理な判断が少なからず起きてしまいます。判断を誤らないように、行動経済学を用いて就活対策をするならば──。『9割の買い物は不要である 行動経済学でわかる「得する人・損する人」』『スゴイ! 行動経済学』などの著者の橋本之克さんによる連載です。
第3回は、「合説に足を運んだだけで満足してしまう」「OB・OG訪問せずにネットの情報で知った気になってしまう」といった心理の原因について。目の前の就活だけでなく、将来の仕事から実生活にも役に立つ、就活を成功させるための心理テクニックをお伝えしていきます。(マスナビ編集部)
自己肯定感を高めて冷静な自己分析を
自分の活動を過剰に評価するな
それであれば最低限、過剰な自信は抱かないようにしたいものです。そのために役立つ行動経済学の法則を紹介しましょう。米国デューク大学教授のダン・アリエリー氏が提唱した「イケア効果」です。これは自分でつくった物を、実際以上に高く評価するという心理的なバイアスです。完成品ではなく、購入者が持ち帰って組み立てる家具で人気の家具量販店「イケア(IKEA)」の店名から名づけられました。
就活でも、この心理に影響されないよう注意すべきです。例えば合同説明会への参加などを行うとします。会を探して申し込み、移動やアクセスを通じて参加し、時間を割いて情報入手などを行います。当然、こうした活動は価値あるものです。しかしイケア効果の影響を受けてしまうと、自分の行動の価値を高く評価し過ぎる可能性があるのです。その結果、合説に参加しただけで満足してしまうかもしれません。または自分は頑張っていると思い込んで油断が生まれ、活動のペースを落としてしまうこともありえます。
こうした自信過剰の状態を避けるために、ぜひ覚えておいてほしい、もう一つの法則が「コントロール幻想」です。これは自分の力ではコントロールできない物に対しても、自分の意志を反映させられると思い込む心理です。わかりやすい例として、晴れ男や晴れ女だと自称する人をイメージしてください。彼らには、実際に晴れてほしい日には必ず晴れる、逆に大事な外出の日に必ず雨が降る、といった経験があるのかもしれません。しかし人間が自然現象を左右できるはずはないので、それらは「コントロール幻想」に影響された思い込みです。
就活生の皆さんが、この影響を受けるとどうなるでしょう。例えば……
この続きは、新刊『なんで?を解き明かす行動経済学が導く 納得就活~就活を成功させるための心理テクニック~』で読むことができます。
著者プロフィール
マーケティング&ブランディングディレクター/昭和女子大学 現代ビジネス研究所 研究員 橋本之克さん
東京工業大学社会工学科卒業後、読売広告社、日本総合研究所を経て、1998年アサツー ディ・ケイ入社。戦略プランナーとして金融・不動産・環境エネルギー等の多様な業界のクライアント向けに顧客獲得業務を実施。2019年独立。現在は、行動経済学をビジネスに活用する企業向けのコンサルティングや研修講師を行う。また企業や商品に関するブランディング戦略の構築と実施にも携わる。著書に『9割の買い物は不要である 行動経済学でわかる「得する人・損する人」』(秀和システム)、『世界最前線の研究でわかる! スゴい! 行動経済学』(総合法令)ほか。
ちまたのメディア等で、最近の若者は自己肯定感が低いという説を聞くことがあります。自己肯定感とは、自らのあり方を積極的に評価できる感情であり、自尊心とも近いものです。あらゆる自分を、プラス面だけではなくマイナス面も含めて受け入れることで高まります。
一方、字面が似ている「自信過剰」は「自己肯定」と似て非なるものです。自分のプラス部分を過剰に捉えることにより生まれます。自信過剰な人は、自信がないために自分を守ろうとして、自身のプラス面だけを見てしまうのかもしれません。
就活生の皆さんも自己肯定感が高い冷静な心理状態にできることが理想ですよね。しかしESの作成や面接など、さまざまな場面で自分の良さを主張しなければならないのに、自身のマイナス面を冷静に認めるのは簡単なことではありません。