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レポート

人間は「感情」にとらわれる動物である。面接官の心理を見逃さない真理 ─ 就活を成功させるための心理テクニック 第17回

橋本之克さん

人間は「感情」にとらわれる動物である。面接官の心理を見逃さない真理 ─ 就活を成功させるための心理テクニック 第17回

近年大注目の「行動経済学」。不合理な生き物である人間を、心理学と経済学を用いて分析する考え方で、マーケターが消費者インサイト(消費者自身が気づいていない本音や動機)を捉える際にも参考にするメソッドです。就職活動も人の不合理な判断が少なからず起きてしまいます。判断を誤らないように、行動経済学を用いて就活対策をするならば──。

朝、快晴だと「今日一日がすべてうまくいく気がする」と思うことありませんか? さらに面接で自己アピールも完璧に話せたとします。それなのに面接官に全然響いていない、なんなら不機嫌だった…という日もあります。第17回では、そんな無意識に働く感情の不思議について。目の前の就活だけでなく、将来の仕事から実生活にも役に立つ、就活を成功させるための心理テクニックをお伝えしていきます。(マスナビ編集部)

投資家ですら無意識の感情に振り回されている

「人間は感情の動物である」という言葉があります。行動経済学においても、感情と判断の関係に関しては研究が行われてきました。そこから「感情ヒューリスティック」という心理的バイアスがあることが明らかにされています。これは、良し悪しの判断や、行動の選択、出現頻度や確率などを「好き嫌い」といった感情で判断してしまう心理的バイアスです。

「感情ヒューリスティック」を提唱したオレゴン大学教授のポール・スロビックは、判断の対象に対して人が好ましい感情を持っているときには、そのメリットが高く、リスクは少ないと判断する傾向があると言います。逆に嫌な感情のときはメリットが低く、リスクは高いと判断します。

このバイアスは、“お金の投資
のような合理的であるべき対象にも働きます。一例として、晴れて気持ちの良い日の朝に、投資家は普段より多くお金を投資することが確かめられています。これは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授のジャック・ハーシュライファーらの、全世界の主要株式市場26箇所における、1982年から1997年までの調査により、明らかになりました。「午前中の日照時間」と「株式指数」には関連性があり、特にニューヨークでは快晴時の株式リターンが年率24.8%、曇りでは8.7%でした。好天で気分が前向きになった投資家が積極的に投資を行い、高いリターンを得たのです。このほかにも、雲や風の量、季節などと投資の関係について調査が行われ、「感情ヒューリスティック」の存在が証明されています。

身近な私たちの日常生活でも「感情ヒューリスティック」による判断は見られます。学校などにおける“ひいき
も、その一つです。先生が明確な理由もなく、好き嫌いで人を評価していると感じたことのある人は多いでしょう。しかし「感情ヒューリスティック」は、無意識に働くバイアスなので、本人がこれを意識することはありません。場合によっては、好き嫌い以外の評価の根拠があると後付けで述べることさえあります。

このバイアスが面接の場面で、試験官の心理に働いたらどうなるでしょう。


この続きは、新刊『なんで?を解き明かす行動経済学が導く 納得就活~就活を成功させるための心理テクニック~』で読むことができます。
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聞き馴染みのあるものに好意を抱いてしまう

著者プロフィール

マーケティング&ブランディングディレクター/昭和女子大学 現代ビジネス研究所 研究員 橋本之克さん
東京工業大学社会工学科卒業後、読売広告社、日本総合研究所を経て、1998年アサツー ディ・ケイ入社。戦略プランナーとして金融・不動産・環境エネルギー等の多様な業界のクライアント向けに顧客獲得業務を実施。2019年独立。現在は、行動経済学をビジネスに活用する企業向けのコンサルティングや研修講師を行う。また企業や商品に関するブランディング戦略の構築と実施にも携わる。著書に『9割の買い物は不要である 行動経済学でわかる「得する人・損する人」』(秀和システム)、『世界最前線の研究でわかる! スゴい! 行動経済学』(総合法令)ほか。